晩秋、11月19日に木曽を訪れた。
木曽福島までは特急しなの、普通に乗り換え、中山道の宿場町 奈良井宿を歩いた。
木曽十一宿のひとつで「奈良井千軒」と呼ばれた大きな宿場町。
中山道最高所の宿で、難所の鳥居峠(1197m)を越える前、
京都へ向かう旅人たちはここで一泊して身体を休めたという。
宿が多く奈良井千軒といわれた。
時代劇のセットのような街並が1キロ以上続く。
おりしも日曜日のお昼前、インバウンドのツーリストたちと家族連れで宿場は賑わっていた。
旅の記録は別投稿とすることにして、木曽と聞いて口をついて出てきた歌のことを書く。
葛城ユキの「木曽は山の中」
葛城ユキといえばハスキーボイスの女性ロックヴォーカリストのイメージだろう。
ヒロも「ボヘミアン」は知ってても、この「木曽は山の中」は知らなかった。
1974年にヤマハのポプコンで最優秀賞に輝いた。
当時流行っていた歌謡フォークソングというジャンルだろうか。
葛城ユキ本人はフォークソングなんて大嫌いで、「木曽は…」をいやいや録音したと聞く。
そんな本人には申し訳ないが僕は「ボヘミアン」なんかよりこの「木曽は山の中」が好きだった。
当時、愛知県に住む高校生、レコードは買わなかったがラジオやテレビで何度も聴いた。
歌い出しのメロディーラインと歌詞が妙に合致して、今でも心の琴線を揺らすのだ。
大学生になって後追いで60年代から70年代(当時でいえば同時代)の洋楽や、モダンジャズに夢中になったが、
その前はフォーク、歌謡曲が好きな地方の高校生だった。
春が来ました お風呂場の窓の外の
遠くに見えるあれは恵那の山か 淡雪がやけに目にしみて
この歌いだしの旋律と歌詞が好きだ。
イントロというのか、Aメロというのか。
木曽の宿に泊まったり、風呂に入ったことはないが、なぜか実体験の記憶として映像のみならず、
空気感や匂いを体感する。
小さな民宿のひのきの匂いのする風呂場、ちょっと熱めの湯が外気に触れて湯気を上げる。
ガラス窓を開けると早春の冷気が入る。
遠くに雪を残した山が見える。
木曽の地名や季節を感じさせる箇所もある。
きのう馬籠で 桜のつぼみふくれ 今日はスミレの花が風を誘う それだけのことがうれしくて
主人公がバスで行く街は名古屋だろうか。
春が来ました 真新しいバスの駅に 明日はひとつ街へでてみようか なにかしら胸が痛むから
有名なのはサビの “ 木曾は山の中です 誰も来やしません だからあなたに会いたくて熱くなるのです ”だけど、ここはどうでもいい。(笑)
思えば、僕は派手なサビのリフレインより、静かに始まるAメロに惚れる傾向がある。
サザンの「いとしのエリー」しかり。
荒井由実の「ひこうき雲」しかり。
谷村新司、加山雄三の「サライ」しかり。
小説でもエッセイでも書き出しに一目惚れする傾向もある。
木曽を歩きながら思い出した「木曽は山の中」
どうしてこの歌に惹かれるのは…よくわからない。
自分の奥底にある嗜好だとしか言えない。
心の軟弱な土壌を揺らすのだ。
やわらかく、湿ったところを。
「夜空ノムコウ」の歌詞にもある。
🎵 ぼくのこころの やらかい場所を いまでもまだ しめつける
という感じかも。
「木曽は山の中」と同様に僕自身の琴線に触れるメロディーラインと曲調をもつ歌がある。
音楽的にはどこに共通点があるのかは分からない。
ただ、僕の思春期の思い出と重なり、いまでも心の軟弱土壌を揺らす。
雪解け、芽吹き、別れ、旅立ち…。
直接、季節の描写はなくても早春を感じさせる。
[ 2023/11/24 記 ]
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