ぷよねこ減量日記 since 2016

結果が、最初の思惑通りにならなくても、そこで過ごした時間は確実に存在する。そして最後に意味をもつのは、結果ではなく、過ごしてしまった、かけがいのないその時間 である。 (星野道夫)

2021/11/02 Tue. 「鵞鳥湖の夜」を観て丸玉食堂へ行きたくなる。

日記の日付が前後するが、2日の昼過ぎから仕事はしないと決めこんで映画を観た。

ずっとamazonプライムのウォッチリストに入っていた「鵞鳥湖の夜」(2019年)。

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ディアオ・イーナン監督グイ・ルンメイ主演は「薄氷の殺人」に次いで2本目

 

大好物の現代中国のノワール、暗黒映画だ。

これまで「薄氷の殺人」(2015年)、「迫り来る嵐」(2017年)は劇場で観た。

この「鵞鳥湖の夜」は見逃したまま上映は終わってしまった。

今回、観て劇場で観たらもっともっと良かったのにな、と思った。

謎めいたストーリーと映像が素晴らしい。

舞台は2012年の中国南部の湖畔にある街。

荒んだ犯罪都市。

映画に都市名は出てこなかった(はず)、見落としているのかもしれないけど。

おそらく海南省か湖南省か華南のどこかの小都市がモデル。

ヨーロッパかハリウッドのハードボイルド映画のようでもある。

中国や韓国のノワール、魅力の半分くらいは舞台となる街の描写だと思う。

上から目線かもしれないが、かつての戦後の日本を思わせる。

戦後というのは昭和20年代、あるいは僕らが子供だった昭和30年代。

その世界は、犯罪集団、裏路地の夜の闇、食べものの匂い、広場で踊る民衆、

水浴嬢という性風俗、そして、アジアモンスーン独特の暑く湿った空気が織りなす。

まだつい最近の2012年、北京五輪後の中国地方小都市の実態をこれなのか…。

かの大国は豊かなのか貧しいのか、とにかく激しい国だと感じた。

 

あやしげなディスコダンス「怪僧ラスプーチン」がいい。

   

「薄氷の殺人」で第64回ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞した中国の気鋭ディアオ・イーナン監督が、中国社会の底辺で生きる人間たちの現実を鮮烈な映像で描いたノワールサスペンス。2012年、中国南部。再開発から取り残された鵞鳥湖(がちょうこ)周辺の地区で、ギャングたちの縄張り争いが激化していた。刑務所を出て古巣のバイク窃盗団に戻った男チョウは、対立組織との争いに巻き込まれ、逃走中に誤って警官を射殺してしまう。全国に指名手配された彼は、自身にかけられた報奨金30万元を妻子に残すべく画策。そんな彼の前に、見知らぬ女アイアイが妻の代理としてやって来る。鵞鳥湖の水辺で娼婦として生きる彼女と行動をともにするチョウだったが、警察や報奨金強奪を狙う窃盗団に追われ、後戻りのできない袋小路へと追い詰められていく。「1911」のフー・ゴーが主演を務め、「薄氷の殺人」のグイ・ルンメイ、リャオ・ファンが共演。2019年製作/111分/PG12/中国・フランス合作

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薄汚れた集合住宅 たまらない。

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アンニュイか、寝起きか?

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絶望を演じるアイアイ

またグイ・ルンメイに会えた。

彼女の映画は何本観ただろうか。

もうひとり主人公の妻を演じた女優もどこかで観た気がした。

二人とも人生に絶望して感情をなくして生きていてもなお美しいということ。

こちらの勝手な思いこみだろうけど。

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初めて見る女優なのに既視感がある

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女優二人の関係は…?

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実は彼女…

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このあと発作を起こす

とにかく、イートシーンがそそる。

決して美味しいでしょと照明を当てて撮ってるわけではない。

汚い食堂のワンタン、謎の麺類。

元町の丸玉食堂へ行きたくなる。

注文は決まっている。

キリンの大瓶、腸詰め、ローメンか肉飯。

視線をどこにも定めず、人生に絶望したかのように、ビールを飲み、腸詰めを食べるのだ。

食べ終えたら神戸の街は雨に煙っている。

きょうは蒸し暑いな、って感じで。

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ランニングシャツのオヤジ、丸玉食堂を思い出した。

映画の途中で誰かが口ずさむ歌がある。

どこかで聞いたメロディー、南方歌謡だ。

「夜来香」でもない。

「蘇州夜曲」でもない。

脳内でその旋律をリピートして思いだそうとしていた。

クライマックス近くになって思い出す。

ブンガワンソロ!

インドネシアの歌だっけ。

その中国語のブンガワンソロがエンドテーマに流れた。

この歌の南洋風の明るい旋律に似つかわしくエンディングは意外にも明るい。