「 撮らないなら割って入って止めなさい!止めないなら撮って伝えなさい!
あんたみたいなのが何の役にも立たないのよ!」
「シャバは我慢の連続ですよ。我慢のわりにたいして面白うもなか。
やけど、空が広いち言いますよ」
朝から冷たい雨が降っている。
ブロンプトンを家の中に入れておいて正解だった。
雨が降っている午前中が一番気温が高く、これから夜にかけて気温が下がるらしい。
気温に敏感になるのも衰えてきた証左のひとつだろう。
子供は年中半ズボンでも平気だものね。
セルジオが日録に思い出話を綴っている。 家作業 : 風屋敷日録
雨の日は昔のことを思い出す…と書いている。
雨が空から降れば、思い出は地面にしみこむ と書いたのは劇作家の別役実。
そうか、書いたのは小室等ではないのか。
雨が降って数億の人の思い出が地面にしみこんで歴史になるんだね。
ボクたちはその土地を歩きながらそれを感じる。
しょうがない、雨の日はしょうがない。
瀬戸内寂聴さんの寂庵へ撮影で通ったのはおととしの今頃だった。
3月3日は三十三間堂での春桃会で法話会があったのだ。
寂聴さんは今も元気そうで朝日新聞の連載がネットにもアップされている。
寂庵の庭の梅にまつわる思い出を書いている。
ひとつひとつのエピソードが小説のようだ。
(寂聴 残された日々:68)春を告げる香り 梅の花、想いおこす贈り主:朝日新聞デジタル
寂庵での法話会の撮影で春の庭に咲く花々を撮った。
梅、沈丁花、馬酔木、山茶花、クリスマスローズ…。
もう2年前か…。
午前中から午後にかけて自宅で仕事をする。
今週のポスプロ編集を自分でやるのでテロップ原稿を改訂する、あるいは新たに作成する作業。
1時間以上やると集中力が下がるのでインターバルにプランクやギターのチューニングをする。
プランクチャレンジは24日目、210秒だけど60秒×3と30秒で分割してやっている。
朝、なぜかコーンフレークが食べたくなって所望した。
「お昼はこれにしようと思ってたのでコーンフレークが欲しいと言われてちょっと驚いたわ」
と言ったヒロが作ったメニューはこれでした。
昼ごはんを食べ終えた頃、西の空が明るくなり雨が上がる。
ブロンプトンを組み立てて出かける。
カリマーのデイパックに新しいMacBook Airを入れた。
お、なんかいいじゃないか。(笑)
いいもの、好きなものには人をワクワクさせてくれる魅力がある。
ことし5本目の劇場鑑賞。
「すばらしき世界」@MOVIXあまがさき早く見たかった映画なので満を持して観た。
本当は木曜日まで待って観る予定だったが、雨なので映画館も空いてるかなと思って。
15時25分の回、大きなスクリーンだが客は20人くらい。
「ゆれる」「永い言い訳」の西川美和監督が役所広司と初タッグを組んだ人間ドラマ。これまですべてオリジナル脚本の映画を手がけたきた西川監督にとって初めて小説原案の作品となり、直木賞作家・佐木隆三が実在の人物をモデルにつづった小説「身分帳」を原案に、舞台を原作から約35年後の現代に置き換え、人生の大半を裏社会と刑務所で過ごした男の再出発の日々を描く。殺人を犯し13年の刑期を終えた三上は、目まぐるしく変化する社会からすっかり取り残され、身元引受人の弁護士・庄司らの助けを借りながら自立を目指していた。そんなある日、生き別れた母を探す三上に、若手テレビディレクターの津乃田とやり手のプロデューサーの吉澤が近づいてくる。彼らは、社会に適応しようとあがきながら、生き別れた母親を捜す三上の姿を感動ドキュメンタリーに仕立て上げようとしていたが……。 2021年製作/126分/G/日本配給:ワーナー・ブラザース映画
2時間ちょっとある。
驚天動地の出来事がが続けざまに起きて観る者を飽きさせない…というわけではない。
派手な出来事は起こらないのにスクリーンから目が離せなかった。
スクリーンと言うより主人公の三上から目が離せなかった。
三上はどうなるのだろう?
心配したり、同情したり、呆れて見放したり。
映画をそんなふうに観たのは久しぶりだった。
ー「社会」と「人間」の今をえぐる問題作
というコピーは逆に安っぽい感じがしてしまう。
西川美和監督が撮った初めてオリジナル脚本ではない作品。
この映画きっかけで絶版から甦った佐木隆三「身分帳」が読みたくなった。
西川監督の解説だけ立ち読みしよかな。(笑)
この映画の制作過程を綴った「スクリーンが待っている」を半分くらい読んでいた。
たまらなく観たくなっていた。
読み終えてから観るか、観てしまって残り十数ページをおいしく味わうかの二択。
今日が雨じゃなかったら読み終えてからにしただろうな。
雨降りだから映画を観に行こう、でした。
西川美和さんのエッセイ集は三冊出ていて全て読んでいる。
「映画にまつわる x について」「映画にまつわる x について 2」の二冊は図書館で借りて読んだ。
かなり面白かった。
憶えているのは「永い言い訳」の主人公を衣笠祥雄としたいと(彼女は広島出身でカープファン)、
本人に許可をもらおうと連絡をとったらサイン入りバットが送られて来たこと。
バットには「限りなき挑戦」と書かれていたこと、は屈託のない昭和のスターだなと思った。
今回「すばらしき世界」の制作過程やキャストとの交流を描いた「スクリーンが待っている」も
観てからもういちど読み返すのが楽しい。2倍以上面白い。
観てから読むのが正解だなと思った。
旧作ももう一度観て、「映画にまつわる x について」をKindleで読もうかな。
そうそうまだ「蛇イチゴ」と「夢売るふたり」は観てないのだ。
老後の楽しみ。
音楽が林正樹さんだった。
林正樹は長谷川きよしさんのライブで知ったのだ。
西宮でピアノソロのライブがあったので聴きに行っていっしょに写真を撮ったことがある。
ライブのあと、CDを買った。
いま、サイン入りのそのアルバムを聴きながら書いている。
ライブの日の日記のタイトルは「木漏れ日のような」、まさに木漏れ日のピアノ。
あのシーン、このシーンを思い出す。
ラスト近く、アベくんと花束のシーン、あそこで泣いた。
主人公 三上は持病が高血圧ってとこもシンパシーを感じた。
役所広司さんは1956年1月生まれ、僕より一学年上の同世代なんですね。
三上が行き詰まって九州へ行く。
電車じゃなくて飛行機というのがいい演出だと思った。
あそこは旅情ではないのだ。
そして、地元九州で三上が目にした出来事、この脚本が素晴らしい。
「ヤクザと家族」を思い出す。
刺さる台詞の数々を思い出す。
テレビ制作マンのツノダ(仲野大賀)が三上の暴力を目の当たりにして逃げ出す。
局のプロデューサーのヨシザワ(長澤まさみ)が追いかけて言い放つ。
「撮らないなら割って入って止めなさい!止めないなら撮って伝えなさい!」
取材って行為の真理をついている台詞。
【映画『すばらしき世界』特別寄稿】「ジャーナリストであること、人として生きること」
映画の公式ホームページにキャストの一人である六角精二との対談がある。
六角精二が好きな台詞として挙げたのはヤクザの姉さん役のキムラ緑子の台詞だった。
(その前にねっとりと三上に迫るシーンもあって、実に上手いなあ)
「娑婆は我慢の連続ですよ。我慢のわりにたいして面白うもなか。やけど、空が広いち言いますよ」
六角 ちょっと聞きたいんですが、映画の中で、主人公が昔の仲間である
博多のヤクザの親分のところに行くシーンがあるでしょう。
警察の家宅捜索で家に入れなくなって、
ヤクザのおかみさん役のキムラ緑子さんが祝儀袋を渡しながら、
「娑婆は我慢の連続ですよ。我慢のわりにたいして面白うもなか。
やけど、空が広いち言いますよ」っていう台詞があるじゃないですか。
あの言葉って、『身分帳』の中にあったんですか?
西川 あれはたしか、私のオリジナルですね。
六角 あれさあ、すごいよ。僕は、あの言葉がこの映画の中で一番好き。
西川 そうですか? やっぱりあの台詞が人に引っかかるんですね。
そこから英語タイトルも「Under the open sky」と付けられました。
ラスト近く、確かに三上の頭上には広い空があった。
「すばらしき世界」=「Under the open sky」
もう一度見たい。
見終わってもなぜか食欲が沸かず、西宮のスターバックスでワッフルと珈琲だけにした。
帰宅後、冷凍してあった肉まんをチンして一個だけ食べた。