うんざりする。
夏の終わりになると決まってうんざりする。
うんざりという季節名にしてもいいくらい。
春、夏、うんざり、秋、冬。
秋から冬、冬から春、春から夏とどのフェーズでも新しいフェーズに期待するものだけど、
僕は8月終わりから9月半ばあたり、次の季節、秋が特に特別に待ち遠しい。
中学生、高校生の頃からそういう傾向があった。
山あり海あり川あり湖ありと日本の国土は美しい。
加えて4つの季節があって(今は少しあやしいけど)、さらに魅力が増している。
その分、人間が贅沢になってしまって、いいものであってもある一定期間続くと必ず飽きる。
うんざりの正体はこれではないかと思う。
暑さはピークは過ぎたのかなと思う。
午後から塚口サンサン劇場へ行く。
今はシネコンのシステムでやっているけど、メジャーなシネコンにはない居心地の良さがある。
シニア料金も他が1200円のところ1100円に据え置き。
シニア御用達の映画館です。
A部さんもリタイアしてから阪急沿線のこの映画館を重宝しているようだ。
「アルプススタンドのはしの方」@塚口サンサン劇場
この劇場での初日でもあり大きめのスクリーンで客は30人近く入っていた。
スクリーンに高校生、観ているのはほぼほぼシニア料金の人々(僕も含めて)である。
第63回全国高等学校演劇大会で最優秀賞となる文部科学大臣賞を受賞し、全国の高校で上演され続けている兵庫県立東播磨高校演劇部の名作戯曲を映画化。
夏の甲子園1回戦に出場している母校の応援のため、演劇部員の安田と田宮は野球のルールも知らずにスタンドにやって来た。そこに遅れて、元野球部員の藤野がやって来る。訳あって互いに妙に気を遣う安田と田宮。応援スタンドには帰宅部の宮下の姿もあった。成績優秀な宮下は吹奏楽部部長の久住に成績で学年1位の座を明け渡してしまったばかりだった。それぞれが思いを抱えながら、試合は1点を争う展開へと突入していく。
2019年に浅草九劇で上演された舞台版にも出演した小野莉奈、⻄本まりん、中村守里のほか、平井亜門、黒木ひかり、目次立樹らが顔をそろえる。
監督は数々の劇場映画やビデオ作品を手がける城定秀夫。
見る前からレビューを聞いたり読んだりしてひとつ気になっていることがあった。
もともと舞台演劇だからほぼ全編アルプススタンドという設定だ。
アルプススタンドというのは甲子園球場にしかない。
東京ドームにも神宮球場にもヤフオクドームにもない。
で、この映画のタイトルは「アルプススタンドの…」。
しかし! 実際の撮影場所が「甲子園に見えない」という声多し。
予告編を観ても……これは違うだろと。
僕らみたいに野球ファンで、実際に甲子園に何度も行ったことがある観客はみんな思うだろうな。
でも、でもですよ。
結論から言うと、確かに甲子園のアルプススタンドではない、でも、そんなことはどうでもいい。
つまらないことにこだわってオレって人間小さいなと。(笑)
こっちで頭を切り替えればいいのだ。
これ甲子園のアルプススタンドということでよろしく!と。
正直言えば、あえて映画では甲子園じゃなくても良かったんじゃないかな。
地方大会の決勝でもストーリーやディテールは成立したと思う。
ま、それはそれ。
見始めて、ちょっと不安になったのは確か。
なんだかチープな感じがして。
役者も、演技も、セリフも全部が。
ところが…。
いつのまにか何かが変わる。
どのシーンからだろう?
どの台詞からだろう?
世界が変わるというような大げさなものじゃないけど、主人公たちを見る自分が変わる。
見終わったいまも考えてたりする。
いつからだろう、と。
大抵のことは経験したつもりになって、世間を斜めに見ている薄汚れた初老の男が、
高校生演劇なんかに感動しねえよっ て映画の半分くらいまで思ってた。
あれ?
台詞も、仕掛けも、どれもどこかで見たことあるようなもの、ではあるのだ。
そんなチープな筋書きなのに…なんで9回最後の攻撃で目頭熱くしてんだよ、おっさん。
不思議だ。
自分も真ん中から逃げ出してはしっこの方で生きてきたからだろうか?
見終わって外へ出てもまだ十分明るい。
サンサン劇場の今後のラインナップを見る。
階段の途中、壁に貼りだしてある。
「ハチドリ」「パブリック 図書館の奇跡」「ブリット=マリーの幸せなひとりだち」「ステップ」…
見逃したらサンサン劇場 だ。