ぷよねこ減量日記 since 2016

結果が、最初の思惑通りにならなくても、そこで過ごした時間は確実に存在する。そして最後に意味をもつのは、結果ではなく、過ごしてしまった、かけがいのないその時間 である。 (星野道夫)

2020/08/25 Tue. 得点する意欲を問う

残暑が続く。

ピークを越したと言われるけどまだまだ暑い。

一気に真冬になってくれないかな、と夢想する。

夏を名残惜しむという気持ちはもうない。

サルスベリや夾竹桃、夏の花もなんだかくたびれてきた。

朝は走らず、午後から出社。

夕食は最近のマイブーム、櫻家カレー。

辛くて美味しいけど脂の量が半端ないな。

きのう京都吞みしたので今日は一滴も飲まずに一日を終える。

 

日々はそれぞれに適量の義務や問題を含んで到来し、また去っていく。
毎日の終わりにはちょっとした達成感があり、それを七日分まとめれば
一週間という日時を有効に過ごしたことになる。
同じようにして一ヶ月でも一年でも、時間という空の容器に何かを詰めることはできる。
しかし、その手応えに騙されてはいけないと頼子は思う。
うかつな者はそれだけで何かをやり遂げたような気になるが、
次々と飛来する球をとりあえず相手コートに返しているだけで
全然得点していないということだってあるのだ。

                    (池澤夏樹「真昼のプリニウス」)

 

自分のゴールがわからなくなってしまった。

若いときだって明確なヴィジョンがあったわけではないけれど…。

ゴールが見えなくなったというより、諦めが加味されて、ゴールそのものが霧消した。

生物的なフィニッシュ地点が見えてきたからだろうか。

負けは覚悟した。

残り15分。

なすすべも無くプレイタイムが削られていく。

僕はこの夏、得点する意欲もなく、ただボールを追い、このコロナ時代を過ごしている。

逆転勝利の可能性が限りなく小さいとしても、自陣でマイボールを回すだけの日々。

それが最適解だとは思えない。

 

ただ、もうこのままでいいや いまが維持できればいいや というのは違うぞと最近思う。

今の年齢を考えれば肉体的には現状維持=成長というのが現実であることはわかる。

でも、生きる態度として、それはないな  ダメだな  と思うようになった。

いまより良いところに行こうという態度は、実際に行くことより意味があるのかもしれない。

ゴールが見えなくても、今より良いどこかへ行こうとささやかな望みを持つこと。

 

よくわからないことを書いてごめんなさい。 

警鐘の延長、抵抗の迷走、このコロナ下で自分の人生が削られていく。

人間が生きるのはなにかと面倒くさい。

 

東良美季「猫の神様」を読了する。
読むのに少し時間をかけすぎたけど忘れがたい本になった。
雨の中、途切れなく泣く二匹の猫を一人暮らしのアパートに連れてきた孤独なライター。しかし、猫との幸せな日々は永く続かなかった。猫たちは病いに倒れ、相次ぎ逝ってしまう。人間の世界に神様がいるとは思えない、でも猫の寿命はきっと「猫の神様」が決めている。猫との静かな日々の移ろいを綴る心の物語。
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東京郊外、小金井公園の近くに一人暮らすライターがいる。
ある雨の日、ジョギング途中で二匹の捨て猫を拾う。
孤独な男と猫の静かな生活と別れの日記。
昼寝のときに少しずつ読んでは寝て、起きては読み、
わずか230ページの本なのに一ヶ月くらいかかってしまった。
でも、決して眠りを誘う退屈な本ではなかった。
おいしいウイスキーを少しだけ飲んで眠りにつくイメージで、楽しんで読みました。
ほぼ全編が二匹の猫 ぎじゅ太とみゃ太の晩年を綴った日記です。
ねことボクとの闘病記 みたいな。
著者の東良さんは元AV監督で風俗ライター出身、風俗雑誌が次々と廃刊となり、
書く場を求めて毎日JobJog日記というブログを始めた。
2003年、ちょうど僕がぷよねこ減量日記を始めた頃と時を同じくする。
同世代の人で、趣味がジョギング、いろいろとシンパシーを抱く。
ちなみに東良美季さんのお父さんは戸浦六宏(とうらろっこう)という俳優で、
五十代以上の人なら顔を見たらわかる名脇役。大阪出身で京大卒のエリートだった。
最近見た岡本喜八版の「日本のいちばん長い日」で外務官僚を演じていた。

amazonのレビューに
猫も飼ってないし、特に猫好きでもないけど、東良さんの文章が好きなので、買って読んでみた。とにかく文章が上手い。もともとエロ関係の仕事をしていたとは思えない。猫との心の交流が見えてくる良作品。
とあるが、エロ雑誌の記事やコラムを侮ってはいけない。
この「猫の神様」は静かに涙を誘う美しい文章で溢れている。

 

自分がもし一人暮らしでこんな奴らと10年もいっしょに暮らしてたら…と想像する。

その喪失感はひょっとして人間よりも大きいかも知れないな。

 

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拾ってきて間もない頃のみャ太。90年代でワープロが映っている。(「毎日JobJog日記」より)

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しあわせと喪失の物語でした。弟分のぎじゅ太は1年早く逝ってしまった。