まだ5月だというのにずっとつゆぞらが続く。
初夏の気持ちよさを意識して甘受し始めてたのはいつ頃だったろう?
大学生の頃はただいい天気だな、なんだか気持ちいい夏みたいだなと思ってたけど、
それが5月、初夏の気持ちよさだとは認識していかなったように思う。
おそらく6月か7月に北海道を旅して、その乾いた空気の涼しい夏を体験してからだ。
北海道の夏みたいな日は本州では5月に訪れる。
これを初夏を呼ぶのだと身体に刻み込んだ。
なんだか長くなってしまったが、今年の初夏はどこへ入ってしまったのだ、という嘆きである。
終わらないコロナと迷走するオリンピックと長い梅雨。
これが今、2021年の前半です。
駅まで毎日のようにカッパを着て自転車で行く。
若くないのだから転倒や衝突に十分気をつけてと自分に言い聞かせて。
ニュース斑会に続いて二度目のオリンピック代表に内定した体操選手の会見に出席。
ズームでオンラインの記者会見、ま楽っちゃ楽だが。
あんまり取材になってないように思うが、共同会見なんてこんなものか。
ずっと固定画面なのでテレビ的には使いようがないだけどね。
共同会見があります→メールでズームに招待される→静かな共有スペースへ行く
→ひとりでノートパソコンに向かって質疑応答する。
これが記者会見のニューノーマル?
なんでも全部これで済まされたらアカンよね。
きのうHuluオリジナルドラマ「息をひそめて」全8話を観た。
同じ中川龍太郎監督の作品が観てみたいと夜は「四月の永い夢」(2018年)をHuluの配信で観る。
劇場公開の時も観たいリストに入れていた。
その後もamazonプライムのウォッチリストに入れてあった。
中川龍太郎監督ではなく、主演の朝倉あきが目当てだった。
彼女の名前を知ったのはジブリアニメの「かぐや姫の物語」だった。
高畑勲監督が、オーシションでボロボロだったという彼女を抜擢したのは、
「今の女優さんは受け身の声が多い。でも彼女の声はワガママだ」という理由だった。
僕も「かぐや姫…」を観て、彼女の声は好きで、耳にすごく響いた。
ずっと聞いていたいと思わせる声だった。
愁いと儚さをまとった意志的な声、誰だろ?と思って知ったのが朝倉あきだった。
この映画「四月の永い夢」の中川監督は「かぐや姫…」の声を聞いてキャストしたらしい。
詩人出身の監督らしく彼女の詩のようなモノローグで映画が始まる。
「…四月の日射しにほだされて私はようやく恋を得た…ふと目を覚ますと私の世界は真っ白なまま
さめない夢を漂うように あいまいな春の日射しに閉ざされて 私はずっとその四月の中に…いた。」
決して上手なモノローグではない。
でも、響く。
3年前に恋人を亡くした27歳の滝本初海。音楽教師を辞めたままの穏やかな日常は、亡くなった彼からの手紙をきっかけに動き出す。
元教え子との遭遇、染物工場で働く青年からの思いがけない告白。そして心の奥の小さな秘密。
――喪失感から緩やかに解放されていく初海の日々が紡がれる。
朝倉あきがいい。
はっとするような美人じゃないけどずっと観ていられる。(観るなって?)
喪服、夏の寝間着、蕎麦屋の店員、教員、普段着、全部いい。
映画を観ながら僕は彼女、初海に思いを寄せる三浦貴大と同化していた。
心に響いたシーンがあった。
亡くなった恋人の実家から彼が初海に残したファイルが残っていたと報せを受ける。
(恋人の死因は明らかにされない。自殺を思わせる描写もあるが定かではない)
最初は逡巡していた初海だがいつまでも吹っ切れないままではいけないと思ったのか、
彼の実家 富山を訪ねる。
そこで誰にも言えなかった事実を彼の母親に告げる。
母役の髙橋恵子が初海に言う。
「あなたはまだ若いから、人生って何かを獲得してゆくことだと思ってるかも知れないけど、
わたしにとってもある時期まではそういうふうに見えていたけど…。
でも、本当は、人生って、失ってゆくことなんじゃないかなって思うようになった。
失い続ける中で、そのたびに本当の自分自身を発見してゆくしかないんじゃないかなって」
確かにそうだ。
若いときには何かを獲得することが人生だって思ってた。
いまは…毎日少しずつ何かを失ってゆく。
お金、仕事、体力、視力、聴力、持久力、免疫力、記憶力…。
思い出を獲得しても、その分、脳の海馬からそれ以上のメモリーが削除されてゆく。
見終わったあと、購読しているブログをチェックすると…こんな投稿がアップされていた。
5月19日(水)スペースについて : 毎日jogjob日誌 by東良美季
朝ドラの「おちょやん」の最終回に触れての話だった。
先日ツイッターである人が、「何かを手放したとき、不思議なことに空いたスペースは空きっぱなしにはならない」と書いていた。「何かを手放せば、空いたところにはそれよりも『ずっといいもの』がやって来る」と。2013年に関わっていた雑誌がすべて廃刊になり無職になった。あのときは困窮したし心底絶望したけれど、そのおかげで新しい出会いがたくさんあった。あれはスペースが空いたんだなあと、今になってつくづく思う。 (毎日JoggJogB日誌 by 東良美季)
何かを失っても空いたスペースは空きっぱなしにはならなくて、ときにはもっといいもので埋まる。
「四月の永い夢」の駅の食堂でのエンディングシーンはそんな未来を思わせるシーンでした。
中川龍太郎監督の最新作「静かな雨」がamazonで配信されている。
週末に観よう。
このブログで観たいと思ったのかもしれない。
ナチュラルなルックスとやわらかい声がいい。