名もなき生涯 a hidden life
歴史に残らないような行為が世の中の善を作っていく
名もなき生涯を送り―
今は訪れる人もない墓にて眠る人々のお蔭で
物事が さほど悪くはならないのだ ジョージ・エリオット
映画「名もなき生涯」は1940年代のオーストリアを舞台にした事実をベースにした物語だ。
ジョージ・エリオットは19世紀の作家、まさに預言者。
人類の歴史において普遍的に繰り返されてきた事実なのだろう。
テレンス・マリック監督作、3時間一度も寝落ちせずに観たぞ。
世界はある日一変する
映画の舞台である第二次大戦のオーストリアがナチスドイツに自ら併合されたのは、
主人公たちにとって不意の出来事のようだった。そしてある日、世界は一変する。
「1917 命を賭けた伝令」が描く第一次世界大戦も前年まで平和と繁栄を謳歌していたヨーロッパで
ある日、あるきっかけで、世界が好戦的になり、瞬く間に戦争の渦に巻きこまれた。
先日読んた太田愛「天上の葦」では、大本営で働く若き将校たちは口を揃えて、
昭和16年のあの日から世界が変わったと述懐した。1934年9月18日、満州事変。
きょう雨の神戸を歩いて、そんなことを思った。
半年前、ここはワールドカップ観戦に訪れたイングランド、アイルランド、スコットランド、
南アフリカ、カナダのサポーターがビールのジョッキ片手に陽気に歌っていた街だった。
神戸へ出る途中の阪神電車、どこの駅だったか忘れたが年配のオヤジと若い男が乗りこんできた。
二人ともマスクをして、ドタバタとただならぬ気配を発している。
オヤジが周囲に聞かせるように言う。
「なるべく人のおらんところへ行け。そこや。」と優先座席の前あたりを指し示す。
若い男はその場所に立つ。
オヤジは若い男から離れて車両のもうひとつの端まで速歩で消えた。
なにかのっぴきならぬ理由あるのか。
こういう事態になると過敏に反応する人は一定数いるものだ。
マスク無しで咳をしていた人を非難、罵倒したり、通報したりする人。
僕の周りの人間も過剰反応する人がいる。