ぷよねこ減量日記 since 2016

結果が、最初の思惑通りにならなくても、そこで過ごした時間は確実に存在する。そして最後に意味をもつのは、結果ではなく、過ごしてしまった、かけがいのないその時間 である。 (星野道夫)

2022/02/17 (木) 「ちょっと思い出しただけ」 で終わらない

寒い!

寒い冬は好きだったが、今は違う。

平熱も低いし(35度台が多い)、筋肉量も、血行も落ちてる。

寒さが堪える。

トシヨリになった証拠。

人間ひとりは100ワットの白熱電球の熱量だというが、トシヨリは60ワットくらいだ。

高校生のときは真冬でも下着、ボタンダウン、セーターでも平気だったが、

いまはヒートテックやらフリースやらウルトラライトダウンやらを重ね着して、

その上にダウンやウールのコートやパーカーを着て何とか冬を生きている。

 

朝イチにナレーション録りの代行、字幕センターのためのダビング作業などなど。

ユーティリティーおじいさんとして、局内をあちこち動き回った。

そうだ。

自分は防波堤として働けばいいのか。

普段は何も役に立ってないみたいに見えても、洪水とかの有事に(担当者がコロナ陽性になったり)、穴埋めで入ることで、「あ、あのおっさんがおったやん!」と評価してもらえばいいのだ。

それで食いつなげるのなら。

だから、平時は のほほん として、特に何もせず、ひだまりの土手になった気分で生きよう。

 

昼過ぎ、月イチで欲しくなる堂島のインディアンカレーでスパ玉を食べる。

焼きスパゲッティとインディアンのルーの相性は抜群、そして何故か懐かしい味。

インディアンカレーはそれぞれに贔屓(行きつけ)の店がある。

僕はほぼ9割が堂チカの店。

初めて行ったのはかつての毎日新聞があった毎日会館の地下にあったと記憶する。

since 1947  創業1947年ということは戦後すぐの開業、僕より10歳先輩だ。

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二十代で初めて食べて…40年以上、大阪のソウルフードです。

 

映画「ちょっと思い出しただけ」(松井大吾監督)を観る。

池松亮介と伊藤沙莉のダブル主演。

伊藤沙莉主演の恋愛映画は今年もう一作公開された。

燃え殻さん原作の「ボクたちは大人になれなかった」で、これはNetflixでも観られるので、

待機させたまま、いつでも観られる映画の常で、いつ見るやら状態 。

ブログ「一日の王」に先日レビューがアップされていて、劇場鑑賞を思い立つ。

「ちょっと思い出しただけ」というタイトルにも惹かれた。

 

「ちょっと思い出しただけ」@リーブル梅田

昼13時55分の回、一列に5人くらい坐っている。

神戸や阪神間に比べ、梅田や心斎橋は倍くらい入っている感じ。

でも両隣の中2席は空いていた。(僕はたいてい端っこに坐るが)

意欲的な作品を手がけ続けている松居大悟監督のオリジナル脚本を、池松壮亮と伊藤沙莉の主演で映画化。ロックバンド「クリープハイプ」の尾崎世界観が自身のオールタイムベストに挙げる、ジム・ジャームッシュ監督の代表作のひとつ「ナイト・オン・ザ・プラネット」に着想を得て書き上げた新曲「Night on the Planet」に触発された松居監督が執筆した、初めてのオリジナルのラブストーリー。怪我でダンサーの道を諦めた照生とタクシードライバーの葉を軸に、様々な登場人物たちとの会話を通じて都会の夜に無数に輝く人生の機微を、繊細かつユーモラスに描く。2021年・第34回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、観客賞を受賞。

2022年製作/115分/G/日本 配給:東京テアトル

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ダンサー(志望)の池松壮亮とタクシー運転者の伊藤沙莉。

2人の何処にでもありそうな恋愛を、同じ7月26日(男の誕生日)で6年遡ってゆく。

クリーンの中はいつも夏だ。そして、結末はわかっているので少し淋しい。

淋しいけど悲劇ではないのでかなしくはないが、うるっとする感情は含まれている。

特別な2人ではなく、どこにでもいそうな2人で、女の方がタクシー運転手という設定は、

ジム・ジャームッシュの「ナイト・オン・ザ・プラネット」を意識したものらしい。

blog.goo.ne.jp

このブログでも指摘しているし、監督本人も意識していたのが「花束みたいな恋をした」だ。

菅田将暉と有村架純が主演の『花束みたいな恋をした』が、花屋で作られたお洒落な花束だとしたら、池松壮亮と伊藤沙莉が主演の『ちょっと思い出しただけ』は、
路地裏に咲く名も知らぬ草の花で作られたつつましくて小さな花束のような気がした。(「一日の王」より)

「花束…」がメジャーコードの音楽なら、「ちょっと…」はちょっとブルースのマイナーコードが

混じってる感じだろうか。

 

水族館、土砂降り、屋上での花火、タクシーの後部座席、シャッター通りになった夜の商店街…

ちょっと思い出しただけ というセンチメンタルな感情が不意に沸くことは僕にもある。

というか、「何を見てもなにかを思い出す」のだ。

 "I Guess Everything Reminds You of Something"

気を抜くといつのまに回想モードになっている。

人生がそういうフェーズに入っているのかなと思う。

 

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映画の中で池松がつぶやく心の声。(台詞は正確ではありませんが)

「あしたも、あさっても、一年後も、その先も、葉が生きていますように」

たとえ喧嘩別れしても、相手のことを「元気で楽しく暮らしてますように」と思えるだけで、

それは双方にとっていい恋愛だったのではないだろうか、と思う。

映画館を出て、そんな誰かのことを思いながら、寒空の下を歩いた。

 

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みんなが死なないで明日も生きていますように。

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ちょっと撮影監督になった気分で写真を撮る。

 

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今の映画はポスタービジュアルが複数ある。パソコンで簡単にできるからだろうな。

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ジャームッシュ版ではタクシー運転手はウィノナ・ライダーだった。

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このシーン憶えてない!寝落ちしたかも…。

4時半過ぎ、新梅田食堂街の初音で熱燗。

おでん2種と串カツ2本で900万円。

寒さに震えて帰宅、夜は風邪撃退鍋だった。

*具は白菜と豚肉のみでニンニクと生姜を効かせて食べる。