トイレ本にして再読している岸本佐知子さんのエッセイ集「気になる部分」が面白い。
岸本さんはかつて洋酒メーカーに勤めていて年末年始に福袋の販売業務を担当した。
年々、エスカレートしていく福袋お買い求め客の欲望を面白おかしく書いてます。
ヒロと話す。
昔は福袋の中身を見せろなんて誰も言わなかったと思う。
中身はお楽しみ、それが福袋だから。
でも昨今はそうではないらしい。
岸本さんは恐ろしかったという。
「中身が気に食わないと怒る人、一家総出で並んだら中身が重複したと怒る人、あっちの奴のほうがいいものが入っていたと怒る人、福袋を買った人は必ず怒る」
恐るべきコンシュマーハラスメント!
ヒロ曰く、いまの福袋は中身を見えるというのが当然のスタイルらしい。
それって福袋なの?
岸本さんは続ける。
「蛍光ピンクのXLのセーターだの、くりからもんもんの柄のシャツだの、どう考えても売れる見込みのない品々を袋に混ぜて入れたもの、それが福袋である。冷静に考えて5万円で売れるものを2千円で売るはずがないのである。…私は福袋によって人間の業の深さをつくづく思い知らされたのである。」
人生に一度だけ福袋を買ったことがある。
イチロー特番の仕事で東京の年越しをした。
メジャーリーグへ行く前だから1990年代後半。
逗留していた渋谷のホテルの近くにエディーバウアーがあって衝動的に福袋を買った。
サイズは表示してあったと思う。
他に何が入っていたかは憶えていないが一点、デニムのブルゾンが入っていた。
普段なら買わない類のものだったが、袖を通すと悪くない。
あくまで自己評価だが。
裏地がフリースだったかボアだったかで暖かい。
年越しはそのデニムを着て、ちょっと新鮮な気持ちで過ごせた。
そういうのが福袋だと思う。
スズキナオの近著「遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ」があるが、
まさに福袋っていつもの自分じゃないほうを選ぶツールなのかも?
福袋でいつか伊集院光のラジオで聞いた話を思い出した。
「餃子の王将」が東京に出店してまもない頃、ランチに行列が並ぶほどの人気で、
東京ではそうなのかとちょっとした驚きがあったことと、500円の日替わり定食に
あるおばさんが「この定食の唐揚げ、春巻きに替えて下さらない」と言ってるのを
聞いて、伊集院が心の中で「王将とかでそういうのナシだから」と突っこんだと。
そうですよね。
だから安いのに。
同じ材料を大量に仕入れて大量に売れるから安いのにと。
そういう人はフェアトレードという概念はないんだろうな。
てな話で始まった2022年3回目の日曜日。
午前中に走り、午後から都道府県対抗女子駅伝の中継をがっつり観て、
夕方に「村上ラジオ」で特集されていたスタン・ゲッツを聴く。
最晩年のアルバムPeople Time をしんみりと聴きながら過ごした。
ラジオではそのアルバムからチャーリー・ヘイデンのファースト・ソングという曲が流れた。
聞き覚えのある曲だった。
以前、よく聴いていたパット・メセニーとのデュオアルバム「ミズーリの空高く」
にもこのファースト・ソングが収録されている。
ラジオで流れたスタン・ゲッツのテナー版がいい。
肝臓癌の末期で、ゲッツはこのライブの3ヶ月後に亡くなる。
Apple Musicでもamazonミュージックでも3枚組のアルバムが聴ける。
1991年3月3日 コペンハーゲンのジャズハウスでのライブ。
かなしくさみしく美しい演奏です。
ファーストソングを聴きながら海を見よう。
日没直前にロードバイクで御前浜へ行き、海辺の芝生にすわって聴いた。
*以下、フォト日記で。