雨の土曜日、Netflixで韓国のポリティカルサスペンスを一本観た。
キム・ジョンイル似のA木デスクが「これ面白かったですわ」と奨めたのがきっかけ。
去年からずっとiPadにダウンロードしてあったのだが観ないまま年越ししてしまった。
事実ベースのスパイ映画。
元軍人の主人公が事業家に化け、北の中枢へ潜入する。
コードネームはブラックヴィーナス。
原題は「北へ消えたスパイ」
韓国のポリティカルサスペンスには局長とか部長とか課長とか出てくるけど、皆さん命がけ。
「南山の部長」は自らの手で大統領を暗殺したし。
北朝鮮の核開発をめぐり緊迫する1990年代の朝鮮半島を舞台に、北への潜入を命じられた韓国のスパイの命を懸けた工作活動を描き、韓国で数々の映画賞を受賞したサスペンスドラマ。92年、北朝鮮の核開発により緊張状態が高まるなか、軍人だったパク・ソギョンは核開発の実態を探るため、「黒金星(ブラック・ヴィーナス)」というコードネームの工作員として、北朝鮮に潜入する。事業家に扮したパクは、慎重な工作活動によって北朝鮮の対外交渉を一手に握るリ所長の信頼を得ることに成功し、最高権力者である金正日と会うチャンスもつかむ。しかし97年、韓国の大統領選挙をめぐる祖国と北朝鮮の裏取引によって、自分が命を懸けた工作活動が無になることを知ったパクは、激しく苦悩する。監督は「悪いやつら」のユン・ジョンビン、主演は「哭声 コクソン」「アシュラ」のファン・ジョンミン。
2018年製作/137分/G/韓国 原題:The Spy Gone North 配給:ツイン
日録にも少し書いたが、事実ベースでありながらエンタメとして十二分に楽しめた。
また老化劣化の話で情けないが、最初、字幕のスピードについていけなくて、
というか、自宅なので集中力が途切れるのか、何度かリプレイして、ようやく並走出来た。
以前なら、また劇場なら、わからないとこはわからないまま、否応なしに突き進むのだが、
細部まで全部理解しておきたい と思ってしまうのだ。
見終えたときにわかることもあるのでスルーしておけばいいのに。
南の潜入スパイと北の外貨獲得のトップ、この二人が主人公。
ひりつくような緊張感の中、お互いに心を寄せてゆく。
A木お薦めの俳優は北のリ所長を演じたイ・ソンミン。
「南山の部長たち」で朴大統領を演じた俳優だ。
南のスパイはNetflixオリジナルの「ナルコの神」で麻薬王を演じたファン・ジョンミン。
これは事実かどうかはわからないが、二人は孟子の「浩然の気」で通じ合った。
ネタバレだが…
終盤、大統領選で金大中優勢で追い詰められた国家安全企画部は “例の手” を使うべく
黒金星を利用し、北の窓口に接触する。
「国境付近でまた一発ドンパチしてもらえませんかね。金はこれくらい出すんで」
これも事実だったのだ。
北の存在、北の脅威、北の挑発は日本の与党政権にとっても都合がよかったのは明白。
エピローグ的に描かれるその後の二人。
10m以上の距離を置いて目を合わせるこのシーンがいいのだ。
金大中の選挙戦と言えば、映画館で見逃した「キングメーカー 大統領を作った男」が
すでにamazonプライムで観られる。
また、同じファン・ジョンミン主演の映画「交渉」が来月韓国で公開される。
タリバンの人質を助けるべく動いた外交官と国家情報院の事実ベースの物語。
事実ベースの物語が次々と出てくるのは韓国や北朝鮮の政治的ハードシップゆえか。
いや、事実を実名でドラマ化が出来ない日本が世界から見たら特殊なのかも。
これも民主国家を標榜しつつ、数で圧倒、独裁を許してしまった報いなのか。
そもそも土壌が違うのか。
本編とは関係ないが、韓国も北朝鮮も支配者層の会談にはウイスキーが登場する。
「南山の部長たち」もやたら朴大統領はウイスキーをストレートで飲んでいた。
この映画でもキム・ジョンイルも、リ所長も、軍の若き課長も、韓国の上司にあたる室長も。
マッコリじゃないんですね?
あと、これも関係ないが…
主人公のファン・ジョンミンが「孤独のグルメ」の井之頭五郎が被って仕方なかった。
ともに外国相手に商売する貿易商なのも。(笑)