10時過ぎに寝て、5時前に目がさめる。
五十代の働き盛りの人が出張先のホテルで突然死してたなんて話はよく聞く。
いつ死んでも不思議じゃない六十代だって同じで、確率はもっと高いかもしれない。
カメラクルーに僕が起きてこなかったら死んでるからゴメンね、と言っておいた。
でも、死なずに元気(?)に起きられた。
シャワーを浴びて、着替えて、荷物を再パックして、さ、仕事だ。
中華街を出て大会本部のあるニューグランドホテルへ行く。
6時、真っ先にメディア登録を済ませる。
このメディアルームが舞踏会の会場みたいで笑う。
ワールドトライアスロン横浜大会、世界各国から選手たちが集結。
いろいろと制約の中、隔離されたりして今日の本番を迎えた。
取材対象のパラトライアスロンの宇田選手もずっと隔離、弁当生活を強いられていたようだ。
精神的にも栄養的にもベストの条件とは言い難い。
パラトライアスロンのレースはクラスによって時間差でスタートする。
今回は宇田選手のPTS4という障がいクラスのレースのみに集中できる。
PTS4は肩からの腕の欠損と膝から下の切断(義足)の人のクラスで、9ヶ国から参加している。
片腕の選手はスイムが苦手で、義足の選手はランが苦手。
僕らの取材対象である宇田選手は片腕の選手だ。
スイムで遅れるのは想定内、バイクとランで追いかける展開になる。
バイクを終えた時点で9人中7位、出遅れたかと思ったがここからのチェイスが凄かった。
ラン(5キロ)で4人を抜き表彰台圏内の3位となりフィニッシュした。
宇田選手が3位になったので表彰式を撮る。
しかし、表彰式はオリンピック予選を兼ねた男女のエリートレースの終了後だ。
6時間も空いてしまう。
どこから出かけるというわけにも行かず、瀟洒なメディアルームで中継を観ながら過ごす。
メディアルームに用意された朝食用のサンドイッチを食べる。
昼はひとりで中華街へ出かける。
お天気も良く夏日、中華街はけっこう賑わっている。
デパートも居酒屋も休業させられている寂しい大阪の街と比べて横浜は明るい。
正直、うらやましいぞ。
それでも混んでる中華街の店は避けて、きのう見つけた立ち食いそばに行く。
関東では立ち蕎麦というらしいね。
表彰式の予定の3時過ぎにカメラクルーが会場へ行く。
おまかせしてメディアルームにいたら現場から電話が入る。
「表彰式は撮影不可だそうです」
なんや、それ。
聞いてないよ。
食い下がるもオリンピック仕様でメディアコントロールする大会側は受け入れない。
なんだよ、この6時間の待ちは。
表彰式が撮影禁止なんて聞いたことない。
でも、まあ無観客のマスクした選手の表彰式なんて盛り上がらないか。
と自分に言い聞かせて大阪へ帰るか。
帰りの新幹線も空いてた。
大阪へ帰ると天気も悪く街も人気がなくて暗い。