ぷよねこ減量日記 since 2016

結果が、最初の思惑通りにならなくても、そこで過ごした時間は確実に存在する。そして最後に意味をもつのは、結果ではなく、過ごしてしまった、かけがいのないその時間 である。 (星野道夫)

2020/02/23 Sun. 来世は“あちら側”で

天皇誕生日か…。

あすは振替休日か…。

体調が悪いとそろそろ死ぬのではないかと思う。

逆に元気ハツラツだとこれを最後に死ぬのではないかと思う下り坂の今日この頃です。

脳とか心臓とかの感覚(自覚)が五十代までとちょっと違うのです。

これがガクっとくるということか。

どこかが痛むとかではないけど、なんか以前にはなかった不安の種を感じるのです。

 

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#六十三人生大整理なんてしてると選ばなかったもう一つの人生を想像してしまう。

 

起きたら9時半を過ぎていた。

寝るのが遅すぎ問題&日付変更線を過ぎてから仕事する問題を解決しないとこれは修正できない。

ええい、今日は捨てゲームじゃ。

もともとはびわ湖レイクサイドマラソンを走ってる日だった。

新型コロナくんのおかげで5年連続のエントリーが途絶えた。

とはいえ、今年も元気で生きてる。愉しもう。

Mさんからいただいたワニ珈琲アジアンテイストブレンドを淹れる。

今日はハンドドリップじゃなくてコーヒーメイカーで楽をする。

きょうはそういう日。

きのうの記録を打つ。

食事と支出、これは毎日続けている。

そういえば30代の頃からノートに食べたものを記していた。

10冊くらいある。

偉人でもないし、生活史としての価値も僕のものに限ってはないと思う。

捨てよう。

WEB連載「神戸角打ち巡礼」が更新されている。

角打ちの巡礼 芝田先生は東灘から長田へと流れている。

いわく長田は“角打ちの聖地” らしいのだ。

ここいいな。

31杯目「松岡商店」 | 神戸 角打ち巡礼

巡礼レポを読んでいたら保久良山の記述に目がとまった。

グルメ系ではないトラッドな角打ちの店の回。

保久良神社のあたりに昔、灘の一つ火 と言われた石灯籠があって灯台の役目をしていたそうだ。

保久良神社は何度も登っているが知らなかった。

27杯目「小田商店」 | 神戸 角打ち巡礼

そこから平民金子という人の「ごろごろ、神戸」というWEB連載へ飛ぶ。

神戸市:ごろごろ、神戸3「第8回 保久良山」

保久良山は中島らもがファーストキスをした場所であるらしい。

 

   十八のときに、そのころ付き合いはじめた女の子とこの山に登った。

    ヒマはあるけれど、喫茶店に行く金はない、そんな夕暮れだった。

    頂上で、僕は生まれて初めて女の子とキスをした。

    鳥同士のあいさつみたいな、そんなカチッと音の出るようなキスだった。
                  (『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』)

 

この「ごろごろ、神戸」という連載がかなり面白い。

WEBでもいいけど本になってるので紙で読みたいタイプのエッセイだ。

ある夏の須磨海岸にひとり歩きながらの描写がある。

 

    私のすぐ近くの波打ち際で、じゃれるように遊んでいた男女の、女の方が靴も脱がずに海に入っていく。
    靴は濡れ、次に足首が濡れ、そして膝、やがて腰のあたりまで海水に浸かったところで

    女は男の方に振り返り、両手を差し出す。

    それを見ていた男は戸惑いながらも彼女を追うように、海に入って行く。

    2人は何か言葉を交わしているのだろうか、それはわからないけれど、

    波の音しか聞こえない世界で濡れた服のまま抱き合い、キスをし始めた。

 

    私は足元にびろんと伸びた海藻を見て、よし、来世ではあちら側に行けるように頑張ろうと誓う。

                       (ごろごろ、神戸3「保久良山」)

 

三十代の頃、雪山を歩き始めた。

山から下りてくるとスキー場があって、そこのレストハウスで暖をとり酒を飲んだ。

北八ヶ岳の横岳に登って下りてきたのがピラタス蓼科スノーリゾートだった。

レストハウスからはユーミンの歌に出てきそうなカラフルなスキーヤーたちが見えた。

そのとき同行したヨシダマサオがビールを飲みながらぽつりと言った。

「オレらスキーとかせんかったもんなあ」

男女グループでスキーゲレンデに行く青春を想像してみた。

いつ、どこで僕らはその選択肢を消したのだろう。

平民金子氏が書いてるように「来世ではあちら側に行けるように頑張ろう」と思った。

「ごろごろ、神戸」はこう続く。

 

  あちら側の世界。私たちの人生には大なり小なり、様々な分岐点がある。

  例えば信号に引っかかって電車を一本乗り遅れるとか、降りようとしていた駅を眠って乗り過ごすとか、

  自販機で水の代わりにスポーツドリンクを買うとか、アメを買おうとしていたけどなかったのでグミを買うとか、

  どんなにしょうもない事であってもそれがきっかけとなって、人生が変化してしまう場合がある。

  藤子・F・不二雄の『パラレル同窓会』は、そんな様々な分岐点で枝分かれした、平行世界に暮らす「自分」たちが

  一生に一度だけ集まって同窓会をする話だ。

  主人公は商社の社長で十二分に人生の成功者であるという自覚を持つ人物だが、

  パラレル同窓会では様々な「自分」に会う。

  ある世界の自分は同じ会社にいながらも社長ではなく窓際に追いやられている。

  ある世界の自分は、若かりし頃に夢中になった学生運動をやめず活動家として現在も運動に身を投じている。

  ある世界の自分は、金は困っているものの夢を叶えて作家になっている。

  ある世界の自分は、罪を犯して刑務所に入っている。

  私もまた、その時々の分岐点で今とは違った選択をしていれば、まったく違う自分となっていたのだろうか。

 

  平行世界で、私は仲間たちとバーベキューをしたり花火をしたり、ビーチバレーに興じたりしている。

  夜の浜辺に寝転んで、星を見ながら手をつないでいたりしている。

  夏の海に服のまま浸かって恋人と抱き合い、キスをしたりしている。

                       (ごろごろ、神戸3「保久良山」)

 

いま #六十三人生大整理 をしていると選ばなかった人生のことをつい想像してしまう。

写真や手紙や絵はがきや日記やスケジュールノートは選ばなかった人生の廃墟みたいなものだ。

後悔するのにももう余白がない。

あっというまに11時になる。

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2日連続のパン食、目玉焼きと野菜炒め、これも悪くない。

 

そういえば、元町高架下の「梨園」が閉店してしまった。

さすが「ごろごろ、神戸」、ちゃんと取り上げてました。

神戸市:ごろごろ、神戸2「第46回 モトコーにあった中華料理屋の話」
この店を知ったのは存外最近のことで5年くらい前か。

季節に一度くらい近くに寄ると一人で食べに行った。

僕の定番は「肉タマゴ飯」これをメインに餃子かミニ叉焼。

シェアした平民金子氏のエッセイにもあるが、

「肉タマゴ飯」は声に出して食べたい中華ごはんだ。

にくたまごめし、にくたまごめし、にくたまごめし

あれがもう食べられないのかと思うと悲しい。

 

3年前の今頃、午後4時半くらいに行った。

そんな時間だったので老店主は小上がりで眠っていた。

お母さんが起こす。

なんだか申し訳ないなあと思いつつ肉タマゴ飯を注文した。

起き抜けに老店主は中華鍋をふって作ってくれた。

僕は瓶ビールを飲みながら待った。

あれが最後の肉タマゴ飯だったのか…。

エッセイによると閉店の理由は、

 

   店のおかあさんがしみじみと、もう、やっと解放ですわ。

   この人(ご主人)も年やからね。というような事をおっしゃっていた。

   再開発のために志なかばで泣く泣く撤退とかだったらこういう言い方はしないけれど、

   なんというか何十年も中華鍋をふるってきてこれを機会に納得の上での引退、という事だったら、

   こちらとしては「ありがとうございました」とただひとこと、感謝するほかない。」

 

「この人も年やからね」
そうか、納得の上での引退か。
平民金子氏のエッセイ、惜別の思いをこんな文章で締めている。

 

   なんとなく「おつかれさまでした」と言って店を出て、

   帰り道、モトコー5…モトコー6…モトコー7…としだいに薄暗くなる通りを歩いていると、

   さっきお店の中で聞いたばかりの「もう年やから」という声が、

   元町高架下という建物自体から響いてくる言葉であるような気もした。

   私はこの商店街に対して、おつかれさまでした、と言えばいいのか、

   もっと他の言葉をかければいいのか、今もまだ、わからないでいる。

 

モトコーを西へ行くにしたがって薄暗くなるあの感覚。

商店街そのものから聞こえてくる「もう年やから」

秀逸な表現だ。

 

ちなみになんで「ごろごろ、神戸」なのか?

ごろごろって何?

わかりました。

平民さんは子育てパパで(イクメン?)、かつては風を切って颯爽とひとりで旅していたが、

今はベビーカーに娘さんと犬の小さな生き物でゴテゴテした感じでのんびり歩いているとのこと。

 

いい陽気、晴れた空を十分使えない後悔あり。

でも、まあ悪くない。

手紙の読み返し、仕分け、処分、などをしながら日が落ちてきた。

美しい落日。

きょうはいつもよりさらにゆっくり走る。

西宮大橋から写真を撮る。

 

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御前浜にはバーベキューファミリーやソロキャンプの人々が。

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海辺を歩く。

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西宮マリーナ、ここは堀江謙一が密出国した場所。こうして見ると意外と都会。

 

夕食はトマトの酸味の効いたエビカレー。

ノンアルコールビールとともに頂く。

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スパイシーでいいが、もう少しだけ旨みが欲しい。

 

深夜にラグビーのWEB原稿が届く。

ウイスキーのお湯割りを飲みながらラー油柿の種とギョニソを食べる。

深夜にボリボリ、あかんやつ。