肉体疲労は気持ちいい、と思っていた。
翌朝、筋肉痛とともに起きて少し身体を伸ばせば回復した。
そんな若き日々…『見たい!』と思った景色に我が身を置くのが人生の快楽だった。
ヨセミテ渓谷、エル・キャピタンという1000mの大岩壁や、あまりに高すぎて水が霧散してしまう滝や、巨大な卵を半分に割ったようなハーフドームの間近に足を運んだ。
ギリシャのメテオラで数日テント泊して、奇岩の上に建つ寺院を巡った。
アラスカではデナリ(マッキンリー)を臨むキャンプ場、オルカの泳ぐ海と崩れ落ちる氷河を見た。
他にもボルネオの4000mを超えるキナバル山、月世界のようなスコットランド北部のスカイ島の絶景、
英国のランズエンドというその名の通り世界の終わりへも旅した。
(実際には美しい海沿いのトレールのある名所)
ヨーロッパアルプス、ハワイ島の火山…。
楽しかったなあ。
ヨセミテへ行った時にはすでに39歳(独身)だったのか…。
NHKスペシャル「ヒマラヤ“悪魔の谷” 〜人跡未踏の秘境に挑む〜」を見た。
真夏の夜、深夜の再放送を見始めたら止まらなかった。
ヨセミテやボルネオの延長線上の場所ではない。
「なんじゃここは!」とテレビを見ながら声に出した。
「こんなところに行けるものか…!」
テレビモニターの映像だけで股間が寒くなる。
文字通りの人跡未踏、ヘリやドローンの映像を見せられて、ここへ行け! と言われたら死を覚悟する。
事実上の死刑宣告。
さすがにここは行ってみたいとは思わない。
見るだけで十分。
その“悪魔の谷”に日本人の登山家であり、渓谷探検家の二人が挑む。
凄い人間がいるものだ。
ひたすら感心、感動しながら夜更けまで見続けた。
ヘリの空撮、ドローン映像の動画がこちら。