ぷよねこ減量日記 since 2016

結果が、最初の思惑通りにならなくても、そこで過ごした時間は確実に存在する。そして最後に意味をもつのは、結果ではなく、過ごしてしまった、かけがいのないその時間 である。 (星野道夫)

2022/08/05 (金)  そんなめんどうな話の女とは… 山下清展@神戸ファッション美術館

六甲アイランドの神戸ファッション美術館の「山下清 展」へ行く。

会場に山下清さんの略年譜があって、この放浪の画家はいくつで亡くなったのだろう?と

見たら、享年四十九、脳溢血で倒れたのが昭和46年、1971年とある。

大阪万博の翌年か…画伯は万博へ行ったのかな? などと考えて、生きてたらいくつだろ?

と計算したら、今年で100歳になることがわかった。

百歳じゃん!

あ、そうか、だから「生誕100年」のこのタイミングで展覧会が開催されたのか。

ポスターにも「百年目の大回想」ってコピーあるじゃん。(笑)

幼い頃の鉛筆画から、貼り絵、ペン画、マジックペン画、陶器に絵付けしたものなどを見る。

説明を読んで驚いたのは放浪の間、氏はスケッチをする道具は持っていなかったらしい。

通っていた学校の施設に帰ってから記憶をたよりに描いた(貼った)のだと言う。

色や人々の表情、風景をかなり正確に記憶していた。

おそらく今でいうサヴァーン症候群だったのだろう。

 

ランニングに半パン姿をイメージするが、実際には夏は浴衣、冬は着物だったそう。

その浴衣とリュックサックが展示してあった。

リュックサックをしみじみと眺めるとなんだか清さんの放浪の日々が目に浮かんできた。

僕もバックパッカーの頃のカリマーのザックを捨てずに持っていたらよかったなあ。

「裸の大将」はランニングに半パンだったが…実際は浴衣だった。

 

リュックの中身は、ごはんと汁物を入れる茶碗が2つ、着替えと犬が怖いので、

吠えられたときの護身用の石が5つ入っていた。

昔はそこら中に野良犬がうろうろしてたから犬が怖いと恐怖だったろうな。

 

ペン画や貼り絵の横にあるプレートに清さんの日記が添えてある。

長崎のグラバー邸のペン画にはこんな日記が…

「長﨑のお蝶さん」という歌の文句はきいたことがあるが。そんなめんどうな話の女とは知らなかった  その墓はどこにありますかときいたら つくった歌げきだから本当はないといわれた つくり話でもうまいとこんなに有名になって大ぜいみにくるものだろうか ぼくは不思議でならなかったので そのわけをいうと先生は筋よりも音楽がいいからねえと平気な顔をしている (山下清)

幼い頃に描いた腕相撲の画には…

ぼくは肥っているが力が弱く 中学二年くらいの力しかない だから男と腕ずもうしてもみんなまけてしまう まけるのはくやしい いやな気がする そこでぼくは勝ちそうな女のひとと腕ずもうをする (山下清)

なんとも素直で、小学生の日記のようだ。

それでいて本質を突いていて、にやりとして、好きにならずにいられない。

自分がどう見られるかという空気から解放されて自由だ。

 

代表作は画家として認められてからヨーロッパを旅して描いた貼り絵群だが、

ヒロは子どもの頃に描いた植物や昆虫の画が好きだと言う。

そういう静物の貼り絵の背景が対象物を際立たせて凄いなと思った。

 

   

 

展覧会に入るときに一悶着あった。

僕が財布を家に忘れてきたので、その中に入っていた身分証(保険証)もない。

運転免許も携帯していないので年齢を証明できるものがない。

65歳以上は通常1200円のところを500円で入場できるのだ。

その顚末を山下清風に書くと…

入り口でぼくが財布をわすれてきたことに気がつく その財布の中には保険しょが入っていて だから保険しょも忘れた てんらん会に入る時に保険しょを見せると1200円が500円になる ぼくは65さいだからわりびきしてくれるのだ でも保険しょがないと65さいだとわからないのでわりびきしてもらえない 奥さんに財布を忘れたというとお金はあるから大丈夫という 財布の中に保険しょが入っていて保険しょも忘れたというとすごく怒った あんたにはがっかりして腹がたつといわれた 怒られるのは苦手で言いかえすのも苦手だからだまって聞いていた 700円もよぶんに払うのは泣きたいくらいかなしいという どうしたらいいのかわからなくなってぼくも泣きたくなった

 

結局、iPhoneに保険証をスキャンした画像があったので事なきを得る。

併設の神戸ゆかりの美術館では「白州次郎・正子展」開催中。次郎さんは芦屋出身。