「気にすることはないさ。誰だって何かを抱えてるんだよ。」「あなたもそう?」「うん。いつもシェービングクリームの缶を握りしめて泣くんだ。」 彼女は楽しそうに笑った。何年か振り、といった笑い方だった。 (村上春樹「風の歌を聴け」)
普段はフィリップスの電気シェーバーを使っているが、銭湯へ行ったり、旅先だったりは
T字の剃刀でウエットシェービングをする。
今はコンビニで売っている使い捨てのシェーバーも優れもので、血だらけになったりしない。
そのときは石鹸やボディシャンプーではなく、専用のシェービングクリームを使う。
シェービングフォームでもなく、ジェルでもない、昔ながらのクリームがいい。
牛乳石鹸のクリームは一本350円くらい。
最近、ちょっと贅沢をした。
amazonでシェービングクリームを購入した。
近江兄弟社のメンターム薬用シェービングクリーム。
製造中止になって久しい商品で、たぶん売れ残りを個人が出品しているのだろう。
価格は1980円だった。
定価は牛乳石鹸のものと変わらないはずなのでかなりふっかけられている。
贅沢だ。
贅沢だけど、このシェービングクリームには思い出がある。
バックパック旅行を頻繁にしていた頃、旅の友はこのクリームだった。
オヤジくさいポマードにような独特の匂いをかぐと、スペインや、マレーシアやボルネオの旅が甦る。
当時のチューブは昔の歯磨き粉みたいな金属製のチューブだったが、今は樹脂製の柔らかいもの。
嗅覚というのは視覚や聴覚より、より強く記憶を呼び起こす。
ゴロワーズやジタンの香りを嗅ぐとヨーロッパの駅を思い出す。
近江兄弟社のシェービングクリームの香りはアジアの安宿のシャワールームを思い出す。
ホステルの窓から見えたシンガポールの裏町や、ボルネオの雨林の緑が目に浮かぶ。
ついでに書く。
ベビーパウダーも好きなアイテムだ。
先日、シェーカータイプのジョンソン&ジョンソンのパウダーを買った。