三ノ宮到着、元町まで歩く。
いつもならルミナリエで賑わう季節、それでも三ノ宮周辺のイルミネーションは煌びやか。
メイン会場で代替イベントをしているはず、と東遊園地に寄ってみた。
小さなメリーゴーランド状のオブジェクトがさみしく点灯していた。
光の回廊があるはずのストリート(仲町線)も人通りが少ない。
18時半前、元町の金時食堂へ入る。
すでにA部氏が瓶ビールを飲んでいた。
グラス一杯だけいただく。
金時食堂は何年ぶりだろう?
須磨や舞子へ行った帰りに寄った記憶があるが、おそらく5年以上は来ていない。
店内は変わらず。
トラッドな大衆食堂、ほとんど中高年、ほとんどの人が晩酌している。
ビールは要らない。熱燗にする。
菊正の小瓶、150mlが即出てくる。
秋刀魚の開きを注文する。
「どうして日本の一日の感染者数はイタリアの10分の1なのに医療崩壊なんですかね?」
「イタリアはとっくに医療崩壊してて、トリアージ(分別)してるから死亡者数がケタ違い、
日本はある種 生真面目に受け入れてるから大騒ぎになってるのです。」
A部氏にそう諭される。
そうなのか。
いきなりちょっと凹む。
フィレンツェ田舎生活便り2を読んでるとそんなイメージはなかったので…。
映画の話になる。
「フェアウェル観ました。」
「よかったでしょ」
「僕はダメでした。」
「そうですか」
また凹む。
「でも、あの音楽はよかったでしょ?」
「音楽がダメでした。」
またまた凹む。
僕のことしのベスト10入りしている映画「ソワレ」「フェアウェル」の評価は低いようだ。
同じ景色を見ても感じるものは違うし、同じ山を見ても見ている箇所が違う。
そうなんでしょうけど、理屈ではなく、気持ちが凹む。
若い頃はそれでも意見を戦わせてたのかな?
受け取る感情やメッセージが違ってたら、それは個人的なものだからしょうがないね、と
いまは思ってしまう。
それでも好きなものが否定される(よくあることですが)と哀しい。
ヒロにもよく「あ、あれ嫌い」と言われる。
逆にヒロが好きなモノを否定しないまでもフツーの反応をすると機嫌が悪くなる。
もっとひどいのは彼女が「嫌い!」というものに同調しなかったときの反応。
ちょっと恐ろしい。
若かったらそれぞれの経験の蓄積がそれほどないから同じ地平で意見が交わせる。
今は感じ方が違うことに体して自分の感情を説明するのが正直しんどい。
そういうものだと諦める。
追加で頼んだ牡蠣フライがいまいち美味しくない。
もう少しカリッと揚げられないのかな、と。
場所を変えて上映時間までをつぶす。
角打ちの「山田酒販」に立つ。
カウンターにはいつものおじさん二人ではなくぽっちゃり系の女性だ。
静かで空いている。
A部氏は月山(島根)、僕はにごり酒、それぞれ一杯ずつで終わる。
さてさて元町映画館、20時10分の上映「どこへ出しても恥ずかしい人」
ここのチケットは自販機ではない。
いつものように「老人一枚」と言って1200円ぽっきりを出す。
1時間にみたない映画だが料金は同じか。
客は僕らを入れて10人ちょっとかな。
フォークシンガーの友川カズキよりも競輪ギャンブラーとしての友川カズキを描いていた。
それでも僕は好きな映画でした。
バスケットボールをするシーンがあった。
本名 及位 典司(のぞきてんじ)、能代工業バスケット部の狂気。
スリーポイントシュートが実に様になっていた。
しゅぽ とボールが網を通過する音。
これが観られただけでもこの映画の価値はある。
同じ映画を観ても観ているところはそれぞれ違うのだ。
映画が終わり監督がステージに上がる。
きょうはそういう日だったのか?
長身の若い監督。
マスクをしてるので顔つきは覚えていない。
何を話していたかも忘れてしまった。
質問コーナーとかがあったら質問しようと思ってたが……無かった。
元町、夜の9時過ぎ、もう一杯だけ飲もうと「元町エビス」でハイボール。
JR元町駅に滑り込んできた米原行き快速に飛び乗って帰宅。
このまま寝てしまったら深夜の米原か…それもいいなと思いつつ西ノ宮で降りた。