自分に短歌や俳句の才が皆無なので、思いを文字に描ける人を尊敬する。
たとえばこの歌…
一日が過ぎれば一日減ってゆく君との時間 もうすぐ夏至だ 永田和宏
夏至という二文字だけでここまで哀切を表現出来るのだ。
もうすぐ夏至だ。冬至の陽はうれしい。
これからどんどん明るくなるのだと思うと、まだ真冬だというのに心が明るむ。
夏至は嫌だ。あとは明るい時間がどんどん短くなってゆくばかり。
一日が過ぎれば一日減ってゆく君との時間 もうすぐ夏至だ 永田和宏
妻の河野裕子に乳癌の転移が見つかったのが、一昨年の七月。手術後八年を経過して、ようやく家族みんなが安心し始めたばかりのころだった。転移・再発がどういう状況を意味するのかは、癌に関わる研究をしていた私には、誰に言われなくともよくわかる。
にわかに妻との時間が抜き差しならない切実なものとして、心を占め始めた。
一日一日をできるだけ一緒に楽しく過ごしたいと願う。
しかし、楽しければ楽しいだけ、そのことによって減っていく時間はいっそう切実に惜しまれるのである。
この家に君との時間はどれくらゐ残ってゐるか梁よ答えよ 河野裕子
(永田和宏「もうすぐ夏至だ」より)
相聞歌というのだろうか。
男女が互いに詠み合う短歌のことを。
僕もヒロも短歌も俳句も詠めない。
6日に放送されたNHKドラマ「あの胸が岬のように遠かった―河野裕子との青春―」を観た。
永田和宏の若き日と現在に柄本佑、河野裕子役に藤野涼子(久々に見た!)、
ドキュメントパートでは永田さん本人が出演していた。
亡き妻の日記と短歌を頼りに、青春時代の恋を追想する物語。一途に人を愛した女性と、不器用な男性の昭和のラブストーリーを、実在の手記をもとにドラマ化。 最愛の妻が亡くなったあと、若いころにつづられた日記が押し入れから見つかった。そこには二人の男性の間で揺れ動く切ない恋心が、数々の短歌とともに瑞々しい筆致でつづられていた。夫は日記を頼りに、青春の日々を追想する心の旅に出る―。日本を代表する高名な歌人のひとり、永田和宏さん(74)がつづった実在の手記をもとに、不器用な男性と、一途に人を愛した女性の青春を描くラブストーリー。
河野裕子短歌賞という賞があって、数年前にその受賞作に感動した。
中高生部門の鳥取県立鳥取東高校(当時)の石名萌さん(19)
干からびたカエルをよけてすすみゆくばいばい、わたしは夏をのりきる
夏の強い日射し、アスファルト、青春の生命力。
凄いなあと感心した。
こういうの物語をドラマ化しようとか、脚本を書こうとか思う人たちの才能も羨ましい。
もしかして監督や脚本家は僕らと世代が近いのだろうか、と思う。
劇中に流れる音楽も琴線に触れた。
キャロル・キングの Will You Love Me Tomorrow
Carole King - Will You Love Me Tomorrow (Lyrics) - YouTube
最初はバート・ヤンシュかなと思ったがアドリブの部分でポール・サイモンだと知る。
Simon & Garfunkel - Angie - YouTube
おかげでバート・ヤンシュの名前を久々に思い出して、Appleミュージックで聴いたりした。
永田本人(柄本)が鼻歌で歌う 倍賞千恵子の 「さよならはダンスの後に 」
www.youtube.comつい最近観た映画「PLAN75 」の七十八の老女となった倍賞千恵子さんを思う。
あの角谷ミチと若き日の(この動画は42歳のとき)智恵子さんを重ねる。
劇中でミチが倍賞千恵子の声で歌った「林檎の木の下で」が今も耳に残っている。