衝動買い、衝動飲み、衝動旅…。
若い頃は日常茶飯事だった日常のささいな衝動的行動。
当時はそれも日常だったけど、トシヨリにとってはたいていうまく運ばない。
しかも、翌日にどーんと疲労というお土産がもれなくついてくる。
昨日は終日働いた。
そうなるとすぐに自分にご褒美をあげたくなる気前のいい正確です。(笑)
だからと言って、どっかへ出かける余裕も体力もないし、
仕事も少しでも前に進めておかないと落ち着かない。
夜に美味しいものを、たとえば鰻でも、と思いつつ、局に出て雑務、すぐに夕方になる。
鰻でも、とそれなりに意気込み、退社したが、なぜか京橋駅で気が変わる。
南口の博多焼鳥の鶏皮焼の店が視界に飛びこんできた。
「かわや」へ入る。
こういう衝動的な路線変更のときはかなりの確率でロクなことがない。
ま、その通りでした。
入っても店員がなかなか反応しない。
椅子(スツール)が異様に固くて座り心地が悪い。
カウンターで若者グループがうるさい。
メニューに飲みたい酒がない。
くどくど。
レモンハイを飲んでいると労務者風の客が入ってきてカウンターの横に坐る。
七十手前くらいだろうか。
しばらく静かに飲んでいたが、すぐに隣の若者グループに声をかけた。
「ねえちゃん、俺ナンボくらいに見える?」
若者グループは即答で言った。
「六十半ばですか」
こういう場合は、たいてい若めに言うものだ。
おじさんはその答えを無視するように(無視しかったのだろう)ひとりで話し始めた。
もともと自分は調理人でコロナで職を失った。
いまは日雇いで働いている。
今日も一日働いて八千円だった。
こう見えて、オレ もうすぐ還暦やねん。
こう見えて? いやいや、というか老け過ぎやん。
僕より5つ以上も若いやん。
おじさんは言った。
「兄ちゃんら、一杯ずつ好きなもの飲み」と。
若者らは「ええー!いいんですかあ。ごちそうさまです。」
おじさんは、なぜか気分がよくて誰かに奢りたかったのだと思う。
年齢のことなんて実はどうでもよかったのかも。
一日働いてはっしぇんえん、皆飲んでまう。
焼酎をもう一杯!
そもそも二十代の若者にとって五十も、六十も、七十も区別がつかないと思う。
自分がそうだったから。
トシヨリはそのあたりをまとめてトシヨリだった。
自分もその年齢差に興味はなかった。
こういう日はあとはグダグダになる。
天五のスシローでいま話題の雲丹を食べたり、初めてスシローで鉄火巻きを食べたり、
グダグダついいでに歩いて神山町のブルースバーでバーボンのボトルの残りを飲み干したり。
すべては衝動的な計画変更から始まった。
失敗の夜。
たまには衝動的な行動がうまくいくことだってあるけど、確率的には低いですな。