晴れ予報だったのに、朝起きたら曇りだとちょっとがっかりする。
5月半ばに入り、いずれ梅雨前線になる前線がじわじわと北上しているせいだろうか。
がっかりはするけど、お出かけしたい症候群からは逃れられて、幾分こころ穏やかになる。
今日は予報通り晴れた。
空気が乾いて気持ちいい。
でも、仕事があるのでお出かけは出来ない。
コールマンのチェア、淹れたての珈琲、マグカップと本を持って海辺へ行こう。
自宅マンションから350歩で御前浜、エノキの巨樹の下にチェアをセットする。
木漏れ日の下で、ケン・リュウの短編「Arc アーク」を読む。
つらい別れを経て心身ともに疲弊したわたしは、職員募集中だったボディ=ワークス社の門を叩く。防腐処理を施した死体にポーズを取らせ、肉体に永続性を与えるその仕事で才能を見いだされたわたしは創業者の息子ジョンと恋に落ちる。ジョンは老齢と死を克服したいと考えており……
不老不死、あるいは人工的な長寿のサイエンスフィクションらしい。
主人公の女性の生い立ちから語られ、彼女は16歳でシングルマザーとなる。
「16歳なんですよ」
と声が聞こえてきた。
「ああ、うちの犬も長生きしまして、つい最近亡くなりました。」
少し離れた松の木の向こうに二人が話していた。
犬を2匹連れた女性と自転車に乗ったおじいさんだった。
犬はシープドッグ系で白いモコモコ、一匹は元気に飛び回り、もう一匹が地面に伏せていた。
16歳なんです、と言われた同じ犬種の老犬はキャンプ用品を運ぶカートに乗せられてきたようだ。
ときどき身体を起こされて、少しだけ歩く。
遠目で見ても辛そうだが、少し運動しないと衰えるのだろう。
もう一匹はその老犬の子供だろうか。
ボールを追いかけてあちこち走り回り、波打ち際へ行って水浴びしたりする。
老若の残酷なまでのコントラスト。
自転車の老人はしばらく飼っていた愛犬の思い出を話して去って行った。
海からいい風が吹く。
本を閉じて真上を見上がるとエノキの葉が揺れている。
こもれびが眩しい。
自分が65歳だという自覚がない。
もしかして僕は人より10年奥手なのかも…と思う。
思い起こすと二十代より三十代の方が自分自身で若さを感じていたような気がする。
10年遅れ……だからと言って55歳の自覚すらない。
精神年齢は若いが身体は若くない。
自戒をこめて思う。
海辺でモーニングコーヒー、いろいろ思うこと多し。
気持ちいいので、雨さえ降らなきゃ週一くらいで来たいなと思った。
午後からポスプロ編集チェックの2本立て。
本社で土曜オンエア版をチェックして、急いでポスプロスタジオに移動する。
なんだか先週の水曜日と同じパターン。
映画「恋はデジャヴ」(懐かしい!)ではないが、一種のループものみたいだ。
二仕事終えて大阪駅で解放される。
朝、浜でコーヒーを飲んでいたのが遙か昔のような気がする。
山長梅田へ行くと意外にも空いていた。
サッポロ小瓶と豚肉と白菜と春雨の中華煮。
李白のうすにごりと小イワシの天ぷら。
仕事帰りの立ち吞みで小一時間。
iPhoneで、NOTEとか、Kindleとか、文庫や新書の小型の本とかを読みつつ飲む。
そんなほっこりしてる時間がたまらなく楽しい。
いつか寝たきりになったら思い出すんだろうな、な〜んて思うと泣きそうになる。
じゃあ、もう一件。
隣のビルに移動してウエダ商店の角打ち。
愛媛の梅錦にごりと鱧竹輪。
薩摩焼酎の水割りの小さい缶と出汁につけたミンチカツ。
1000円以下の楽しみ、ここに極まれり。
いつもより一合ほど余計に飲んでしまった。
ともに気持ちいい朝と晩でした。