先日、スマートレターで石垣島へ送ったコミック本が届いたようだ。
ミネーロがSNSにバーカウンターに置いて撮った画像をアップしていた。
この漫画の原作「猟犬探偵」は僕らが三十代の頃、競って冒険小説を読んでいた頃の作品。
作者の稲見一良(いつら)氏は記録映画の仕事をしてた人で、この小説の舞台は大阪の能勢、
僕らが好きなキャンプ場のある大阪府北部エリアにある。
稲見氏は享年63 …数冊の傑作小説を残して肝臓がんで他界した。
あの頃、好んで読んでいた作家たち、当時の僕らには兄貴みたいな存在だった人、
稲見一良、風間一輝、景山民夫、船戸与一…彼らはもうこの世にいない。
ミネーロに「バーボンでも飲みながら読んでくれ」とメモをつけた。
風間一輝の「男たちは北へ」が読みたくなった。
あの頃に読んだ作家で森詠、志水辰夫、佐々木譲、らはご存命か。
森詠80歳、志水辰夫85歳、北方謙三74歳、佐々木譲71歳、東直己65歳。
佐々木譲は日露戦争で負け、ロシア帝国の占領された日本を舞台にした
IF小説(オルタネート・ヒストリー)「抵抗都市」シリーズを何冊か出している。
いまの世界情勢を考えてしまう設定で久々に読みたくなった。
オルタネートという言葉で想像してみた。
選ばなかったもう一つの人生、この時代に生まれてなかった別の人生。
そして、この列島ではない、別の国に生まれていたら…。
自分がウクライナ人で65歳だったら…
自分がロシア人の65歳だったら…
自分がベラルーシの65歳だったら…
自分がまだ二十代でウクライナの兵士だったら…
自分がまだ十代でロシアの兵士だったら…
ひな祭りに戦争が始まった寒い国のことを思う。
きょうも出勤。
朝からナレーション録り、正午に新しいディレクターと打合せ、デスクで沖縄出張準備、
昼食は「杵屋」でカレーうどん、夕方にまた収録の打合せ。
高齢なので朝から夕方まで続けざまに何かしらTO-DOが並んでいるとけっこう疲れる。
集中力が極端に落ちる。
最近、思う。
かつては二十代、三十代だった自分より10も20も下の人間がすでに現場から退きつつある。
フリーランスとはいえ、管理職より年上のディレクターに仕事を任せたくないよね。
たまたま自分は同じ部署で、使い勝手のいいポジションを確保出来てるだけ。
それは滅多にない、大げさに言えば奇跡みたいなものだと思う。
10年前に戦力外通告を受け、収入が途絶えていても、不思議じゃない。
「それくらいは自分が出来るのにな…」とは決して言わない、思わないこと。
攻撃参加しないフルバックというポジションを自覚して、自らゴールラインまで下がりる。
ラグビーで言うところのキャリーバック、アメフトで言うタッチバック。
そして、
誰にも気づかれないように静かにピッチから去る。
仕事をそういう形で処理して、次にやりたいことを考えよう。
プレイタイムは多くない。