ぷよねこ減量日記 since 2016

結果が、最初の思惑通りにならなくても、そこで過ごした時間は確実に存在する。そして最後に意味をもつのは、結果ではなく、過ごしてしまった、かけがいのないその時間 である。 (星野道夫)

2021/12/13 Mon. 大阪駅前第一ビル ウエダ商店

仕事帰りの一杯はひとりがいい。

無粋かも知れないが、文庫かKindleで小説を読みながら飲むので匿名になれる店がいい。

大箱の角打ち、一杯飯屋(大衆食堂)、町中華、あるいはサイゼリヤなどが独酌に向いている。

一杯の日本酒、一瓶のビール、ワインのデカンタでしばしの書。

ときどき、常連客と店の主人との会話、まれにテレビのニュース番組。シーズンなら野球中継。

 

今日は仕事終わりで金曜日に行った近所の角打ち「ますや商店」で一杯だけと決めていた。

帰りに駅前ビル地下の金券ショップで年賀ハガキと近鉄の株主優待券(帰省用)を買う。

七津屋の前を通る。

七津屋も独酌に向いている。

覗くと一人用のカウンターに空きがない。

ならば…1ビルのウエダ商店でも行ってみるか。

老舗の角打ち、7時台になるとスーツ族で賑わうがまだ6時台、空いていた。

ぷよねこ日記にこんな記述がある。

年季の入った正統派のジャパニーズパブ、ときどきヒルトンとかに泊まっている外国人が覗く。

「ここはビールが飲めるのか?」の質問に、店の兄ちゃんが「Certainly」と答えていたのを見た。

Certainly はカッコ良かったな。

 

「ますや商店」のつもりだったが、たやすく路線変更。

西宮駅から自転車に乗ってしまうと足はとまらず、一息に帰宅したい。

習慣的なものだろうけど、仕事終わりの独酌は京橋か、天満か、梅田がいいな。

「ますや」は、休みか在宅仕事のときの早い時間に行こう。

 

酒と油がしみこんだ年季の入ったカウンター。

中に女性がふたり。

ひとりは六十代のお手伝いらしき人、もうひとりはちょっと腰がまがっている。

七十代後半くらいだろうか。

腰が曲がってはいるが、きびきびと動いて達者なご様子。

カウンターに立って「雪の茅舎」(秋田 由利本荘)を注文する。

「常温?つめたいの?」

「つめたいので。それと はもちくわ 下さい。」

はもちくわ 140円、雪の茅舎 350円 これだけならワインコイン晩酌

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街道をゆく 近江の道 奈良の道」を読みながらゆるゆると。

 

腰の曲がった女性は、常連客や店のスタッフからシャチョーと呼ばれている。

社長!

ウエダ商店のオーナーか、あるいはオーナー夫人なのだろう。

シーズン中はいつもプロ野球中継が流れているが、今は静かな音量でニュース番組。

社長が独り言のようにいう。

「新庄再生工場ですか…。新庄はノムラさんに人を育てろと言われてきたらしいね」

常連客がうなずく。

社長はいつごろからプロ野球を見ているのだろう?

年季の入ったこの店には野村再生工場、新庄亀山の時代どころか、村山江夏の時代、

それ以前、藤村富美男あたりからの関西プロ野球の歴史がカウンターや壁にこびりついてる。

 

またひとり年配の常連らしき客がカウンターの最奥に立つ。

「きょうはシャケあるよ」と社長。

客は無言で手を挙げる。

「あっためる?」

無言で片手。

ガラスケースにコロッケや天ぷらなどの揚げもの。

別の客がアジフライとかき揚げを注文する。

「アジフライはあっためる?」

「いや、そのままでええ」

そんな会話を聞いてたらグラスが空になっている。

一杯だけのつもりが…。(笑)

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澤ノ井280円、アジフライ160円、文庫本

僕の正面に大きな短冊に書かれているのは「澤ノ井」280円。

東京青梅の地酒。

雪の茅舎と澤ノ井、大阪のど真ん中でなぜか東日本の酒を飲む。

「澤ノ井の冷たいのと…えーと、アジフライ」

「あっためる?」ともう一人のカウンターの女性。

「お願いします」

すかさず社長から「20秒ね」と声がかかる。

チン!

「ソース?しょうゆ? 天つゆかけるんもできるけど」

「天つゆで」

保温ポットに入った天つゆをかけてもらう。

おでんの辛子をつけてもらう。

何だか立派な料理みたいになる。

ここは梅田界隈のサラリーマンのオアシス。

徐々に混み合ってきたので勘定をしてもらい店を出る。

1000円でおつりをもらう。

 

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時間を戻す。

朝から予報に反して快晴、冷えこむ。

2021年の月曜日は今日を入れて残り3日しかない。

砂時計の流れ落ちる砂のように時は止められない。

加速もしないが、決して止まらない。

あと3週間。

もうどうでもいいか、という投げやりな気持ちと、最後はちゃんとしよ、という気持ち。

六甲の山を見ながら決めた。

ちゃんとしよ、がわずかに勝る。

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六甲が単なる背景と思うときと立派な山だと思う時がある。

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きょうは立派な山だ!と思う。

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旧社屋の隣り、モントレの前で建設中の建物は…タワー式パーキング?

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と思っていたら、なんと美術館だった!


きょうも寝る前に「塞王の楯」を読む。

通勤時にも読みたいがなんせ550頁超の弁当箱大。

ゆっくりと今週いっぱいかけて楽しもう。