ぷよねこ減量日記 since 2016

結果が、最初の思惑通りにならなくても、そこで過ごした時間は確実に存在する。そして最後に意味をもつのは、結果ではなく、過ごしてしまった、かけがいのないその時間 である。 (星野道夫)

【Easter eggs 2020】「マイルス・デイビス クールの誕生 」@元町映画館

僕が中学生1年のころだった。

夏の日、Sという友だちの家に遊びに行った。

Sはちょっと不良っぽい少年だった。

それほど親しいわけでもなかったのに何でかな?と今でも思う。

少年期にはそういう不思議なことがたまにある。

家には小さな庭があって、その庭に面した日当たりのいい部屋にステレオがあった。

そこは高校生の兄貴の部屋だった。

兄はそのとき不在だったと思う。

その部屋は田舎の中学生の目には都会的で大人びた印象だった。

見慣れない雑誌が何冊も並んでいた。

スイングジャーナルという初めて見る雑誌だった。

楽器を持った黒人のポスターが貼ってあった。

当時、黒人のポスターを貼る日本人なんて知らなかった。

「これは誰?」

「マイルス」

「え?」

「マイルス・デイビス」

会話はそれで終わった。

若くて脳内メモリーの空き容量はたっぷりあった。

マイルス・デイビス

その名前はしっかり記憶に刻み込まれた。

 

A部さんが音楽ドキュメンタリー映画をバンバン見ていてSMSで送ってくる。

モータウン、真夏のジャズ、ジャズ喫茶ベイシー、ザ・バンドに続いて、このマイルスだ。

全て先を越されてるようで悔しいことこの上ない。

見ようと思ってたのに…。

中学生のように悔しい。

あとからNetflixで4月から配信されてるのを知る。

勝てたのに…。

ま、スクリーンで観なきゃね。

 

「マイルス・デイヴィス - クールの誕生- 」@元町映画館

最終日につかまえた。

上映は朝イチの10時台、いそいそと出かける。

「マイルス・デイビス 老人一枚」と窓口で言い1200円を払う。

自由席で隣はいないがそこそこの盛況ぶりだった。

ま、最終日だしね。

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まさにジャズの帝王、めちゃカッコいいのがマイルス・デイビスだ。

 

「ジャズの帝王」と称される天才トランペット奏者マイルス・デイビスを描いたドキュメンタリー。「クールの誕生」「カインド・オブ・ブルー」「ビッチェズ・ブリュー」といった決定的名盤で幾度となくジャズの歴史に革命をもたらし、ロックやヒップホップにも多大な影響を及ぼしたマイルス。常に垣根を取り払い意のままに生きようとした彼は、音楽においても人生においても常に固定観念を破り続けた。貴重なアーカイブ映像・音源・写真をはじめ、クインシー・ジョーンズ、ハービー・ハンコックといったアーティストや家族・友人ら関係者へのインタビューを通し、マイルス・デイビスの波乱万丈な人生と素顔に迫る。Netflixでは「マイルス・デイビス クールの誕生」のタイトルで配信。

2019年製作/115分/G/アメリカ
原題:Miles Davis: Birth of the Cool
配給:EASTWORLD ENTERTAINMENT

 

見応えある王道のドキュメンタリーフィルムだった。

マイルスがとにかくカッコいい。

映画の中で流れる Milestone, So what,  Blue in Green,  Round about Midnight, Walkin  に痺れた。

自分の中の年表と照合しながら見る。

発見も多かった。

歯医者の息子、イーストセントルイスでの少年時代、パリでのジュリエット・グレコとの恋、

ダンサーのフランシス・テイラーとの結婚、ニューポートジャズフェスティバルへの出演、

クールジャズの黄金期、画家マイルス・デイヴィス etc.

Kind of blue は1959年、なんと言ってもマイルスの黄金期は1950年代半ばから1960年にかけてだ。

その前のプレスティッジ時代も好きだが、渋いミュート奏法が冴えまくったのはこの時代だ。

僕がジャズを聴き始めた頃、このミュートがおまり好きではなかった。

くぐもった音で、やっぱりトランペットはオープンホーンでバリバリ吹いて欲しいと思ってた。

ルイ・アームストロング、ルビー・ブラフ、ディジー・ガレスピーが好きだった。

ミュートいいなあと思ったのはキャノンボールのSomething Elesで「枯葉」を聞いてからだった。

ゾクゾクっときた。

これがマイルスか、と。

 

1958年といえば「真夏の夜のジャズ」の年だ。

なんでマイルス・デイビスが出演してないのだろう?

と思ったが映画にはなかっただけで、バリバリとやっていた。

何かの契約があったのか、それともバート・スターンの趣味じゃなかったのか?

ニューポートジャズ出演のメンバーが凄い。

キャノンボール・アダレイ、ジョン・コルトレーン、ビル・エヴァンス、ポール・チェンバース、

ジミー・コブ …これってKind of Blue と同じメンツじゃないのかな。

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このジャケットの女性は当時嫁さんだったダンサー フランシス・テイラー

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このポスタービジュアルもカッコいい。