ジョギングコースの出発点、御前浜に巨樹がある。
松林の中に存在感を放ってドーンと根を下ろしている。
これが何の木か同定できないまま時は過ぎた。
毎日のように目にしてるのに名前を知らない。
ハルニレだろうか?
ケヤキ? エノキ?
乏しい知識で考えてみた。
常緑樹か、落葉樹か、冬にはどうなってただろう?
すべて葉を落としている姿は記憶にない。
5月くらいに鮮やかな若葉になる。
常緑樹?
クスノキは知っているのでクスノキではない。
カシだろうか?
シイだろうか?
「このきなんのき掲示板」というメールサイトがあった。
写真を複数添付して問い合わせた。
ある識者からこんな返答が届く。
「葉および皮目からアサ科エノキだと思います。ご検討ください。」
続いて別の人から
「エノキですね。暖地だとエノキの葉はかなり残ると思います。(葉が落ちている時は寒いのであまり観察しませんしね)
とのことでした。
エノキでしたか。
落葉樹だ。
新緑はきれいだ。
暖かい土地だと葉がかなり残る。
もしかしてここにも温暖化の影響が…!
エノキですか。
野鳥が集まる木としても知られている。
樹齢何年くらいだろうか?
100年は軽く生きてそう。
これからは日記に書ける。
「御前浜のエノキの巨樹が葉を落とした」とか。
炎暑の午後、セルジオと待ち合わせて空堀の「スタンドそのだ」へ行く。
店は外へ向かって開け放たれていて、生ぬるいけれど新鮮な風が背中をくすぐる。
僕らはカウンターに座るとまずタオルで汗をぬぐい大きく鼻で息を吸い込むと、
「ビール、瓶で」 この日の注文の口火を切った。
僕たちはちょっと生ぬるいビールを飲みながらこの夏の経済について語った。
経済と言っても世界や日本の景気のことではなく、己の稼ぎのことだ。
もう決して稼ぎが増えることない。
さて、どうしたもんかねえ。
1年先はこうして安気に飲んでられるのかなあ。
僕らはレバカツにかぶりつき、ラム肉をほおばり、ビールで流しこんだ。
さて、どうしたもんかねえ。
さて、どうしたもんかねえ。
小津安二郎の映画の登場人物にように同じ台詞を繰り返すのだった。
「レモンサワー、2つ。 それと肉豆腐ひとつね」
気がつけば、店では僕らが最年長の酔客じゃないか。
いやあ、まいったな。
いやあ、まいったね。
「スタンドそのだ」を出て、空堀商店街を歩く。
このあたりは大阪夏の陣の際には最前線になった。
大阪はのっぺりとした街だというのは大間違い。
上町台地は起伏に富んでいる。
セルジオの話を聞きながらのんびりと歩く。
もう少し涼しくなったらこんな歴史散歩も楽しいだろう。
谷筋になっている松屋町通りを北上、木下酒店にたどり着く。
カウンターの端っこに陣どって、冷蔵庫から勝手に缶チューハイを出して、飲み始める。
なんだか自分ちで飲んでるみたいにリラックスしてる。
いいですね。
いいですな。
袋入りのえびせんべいを囓りながら缶チューハイを2杯。
さて、帰りますか。
帰りましょう。
帰宅後、「日本のいちばん長い日」の2015年版を見始めたら止まらない。
おととい岡本喜八版、きょうまた原田真人版を観てしまう。
いろいろと描き方の違いが鮮明で面白い。
原田版では横浜警備隊の狂信的な佐々木隊長がほとんど描かれていない。
わずかに命令する隊長役の松山ケンイチが数秒映るだけだ。
あれは必要だったのか?
岡本喜八版には登場しない東条英機が2度出てくる。
天皇と鈴木貫太郞とのやりとりが詳しく描かれている。
本木雅弘演じる裕仁、話し方も似せていて悪くない。