京都、奥嵯峨野にある寂庵にて撮影の仕事。
ちょうど瀬戸内寂聴「花のいのち」でこの庵の庭の話を読んでいる。
本でまさに今読んでいる、その実物が見られるってなんだかワクワクする。
折しも庭は冬時雨に濡れ、苔や石が艶っぽい。
実物、といえば瀬戸内寂聴さんに会うことが出来た。
寂庵法話の撮影に行ったのだから当たり前ですが。
小説家、作家に会うのは二十代の終わり頃に会った宮本輝さん以来、生涯二人目か。
あの頃は宮本さんまだ若く四十前ではなかったか。
それなりに老成はされてたけど。
瀬戸内寂聴。
御年九十六、実績、存在感、文学界の巨人という存在に会うのは初めてかも知れない。
漫談のような笑いに満ちた法話でした。
小説を2つ連載しているそう。(凄い)
長命の秘訣は?と毎回のように聞かれるのだそう。
仙人のようなことは言わないのがいい。
「しっかり睡眠をとること」
「好きなことをすること」
「肉を食べること」
「朝、ぬるい風呂に入ること」
寂聴さんは長命ではあるが死にかけたことは何度もあるそうな。
くも膜下出血、胆のうがん、それに脊柱管狭窄症で寝たきりになったことも。
96年も生きていると谷もあるのだ。
乗り越えるとさらに強くなる、といっても胆のうがんの手術は91歳のとき。
法話の最後に「もうみなさんとはこれで会えないですね。もうすぐ死にますから」
死ぬのはどっちかな?
百歳は十分射程圏内ですね。
寂庵の庭石に彫られた「寂」、榊莫山の書。
JR新快速で京都駅へ。
きょうは京都マラソンの本番、京都市内の交通事情を心配したが市内は特に渋滞はなし。
タクシー運転手に聞くと桜と紅葉の季節が危険らしい。
冬だし、京都の観光客規模から考えてマラソンくらいどうってことないのか。
しかもコースが西京極から北西へ出て反時計回りに半円を描いて平安神宮へフィニッシュ。
南側は規制もなく出入りが自由なのだ。
丸太町通りから嵯峨嵐山の駅へ。
O方カメラマンと機材を拾って寂庵へ行くと法話まで2時間もあるのに列が出来ていた。
撮影準備ということで先に入らせてもらう。
マネージャーのSさんに案内してもらう。
いま Kindleで「おちゃめに100歳」を読んでいるので実物に会えて嬉しい。
寂庵の庭。
「花のいのち」で庭園の木はそれぞれ友人や知り合いからのもらいものだと知っていた。
今はすっかり和風庭園としての体をなして落ち着きがあり美しい。
梅と山茶花とまんさくの花が咲いていた。
瀬戸内寂聴さんはインスタもしている。
しばらくすると200人で埋まる御堂。
月に一度の法話、新聞社や出版社の担当者も顔を出している。
法話終了後の午後3時、ライブビューイングの告知コメントをもらう。
「目線はどこがいいの?」と慣れてらっしゃる。
こんな大物にキュー出しやカウントダウンするのは緊張する。
2012年の王貞治と江夏豊以来の超大物キュー出し。
MKタクシーで五条の蕎麦「よしむら」へ行き担当のA井さんとプチ打ち上げ。
車の中で寂聴さんが三角関係にあったその相手が井上光晴だと知る。
娘の井上荒野が父と寂聴さんのことを小説にしようと同意をとりに来た時、
「どうぞどうぞ。あなたの知らないことももっと教えましょうか」と歓迎されたらしい。
作家・井上光晴とその妻、そして瀬戸内寂聴…長い三角関係の心の綾 井上荒野さん「あちらにいる鬼」|好書好日
井上荒野の「切羽にて」は文庫本で読んだ。
さみしくて印象に残った作品でした。
やっぱり文学者の取材に関わると自分がブンガク的になるな。(笑)
京都駅で八ッ橋を買う。
生でもあんこの入ったのでもない焼き菓子の八ッ橋。
安西水丸さんがポケットに入れて囓ってたと書いてた。
小学校のときの修学旅行の土産はこの八ッ橋だった。
当時はこれしかなかった。
いま、パッケージを見ると英語で Cinnammon cookies とある。
僕らはニッキ(肉桂)味だと認識していた。
八条口のアイリッシュパブで独酌。
ハイボールを一杯だけ飲んででさっと帰る。
快速で西宮まで乗り換えなしで帰る。
昨日、きょうと京都へ行き、緊張もしたので身体が疲れているだろう。
あしたのために、身体を温めて眠ろうとスーパー銭湯へ行く。
今津の「えびすの湯 」850円とちと高い。
2011年頃に廃業した「やまとの湯」からほぼ居抜き。
ほぼ何のリニューアルもされていないので古い。
高くなって単に使いにくくなっただけ。
不足はないがここなれ今津温泉の方が銭湯料金できれいで露天もある。
えびすの湯は二度と行かない。