近鉄ライナーズの今季の取材を始めようと思ったときから12月23日だった。
きょうこの日に戦う試合に勝たないとそれまでの日々の意味が消え去る。
選手もコーチもスタッフもそう心に刻みこんでいたに違いない。
決勝とか、準決勝とか、シーズン初戦とかじゃない。
たった一試合で次の1年の居場所が決まる。
入替戦だ。
勝つか負けるか、一試合で1年間の居場所が決まる。
近鉄は今日の試合でも、シーズン全体でも、モメンタムを掴みきれずに終わった。
短期でも長期でもどこかピークの持って行き方が外れてしまっていたように思う。
フィジカルなコンディショニングと同じように、流れを、ピークを制御することも
強さの中身だということを先週の神戸製鋼の戦いで思い知らされた。
近鉄の大一番は最初からこの試合だと決まっていた。
場所は埼玉の熊谷市にある熊谷ラグビー場。
熊谷は過去に一度来たことがあるか、あるいは周辺かを訪れたときに駅を使ったか?
ただ関わったという記憶、タクシーの運転手とラグビーや気候の話をした記憶があるだけ。
結局、解答にたどり着けなかった。
のぞみ、たにがわを乗り継いで熊谷駅に着いても思い出せなかった。
ここ15年以内のことだとは思うが…もう諦めよう。
とにかく熊谷ラグビー場に到着する。
大きな総合公園のほぼど真ん中にある。
ここも来年のワールドカップ会場となる。
花園ラグビー場より周辺は整備され使いやすそうだ。
ただ観客の出入り口はメインではなくバックスタンド側にあった。
ぐるりと回って報道受付へ行く。
あすリートで取材させてもらった野口選手はリザーブでした。
日野自動車の応援団はさすがに力が入っていた。
このあとどんどんと膨れあがっていった。
そういえば10月のキンチョウスタジアムで神戸製鋼にこてんぱんにされていた。
日野の応援団は新撰組のハッピを着ていた。
日野は土方歳三の出身地なのだ。
14時試合開始、先に得点を挙げたのは近鉄のペナルティゴール。
その直後にマシレワがトライ! と思われたがパントのボールをキャッチするときに
オブストラクションがあったとTMOで判定されてトライは取り消し。
ここで流れをつかみそこねた。
最初は五分だったスクラムもリードされると押されるようになる。
スクラムってそういうものだ。
有水ヘッドコーチは円陣で言った。
「心を折らないこと。またやり直そう」
あの元厚生労働省の村木厚子さんが拘留中に心がけたこと。
落ちこまないこと と 体調を崩さないこと。
落ちこむ時間が長いと体調を崩す。
体調を崩すと、いいことは去り 悪いものが近づいてくる。
ブライトンの奇跡の立役者ルーク・トンプソンはノーサイドのホイッスルが鳴らされた瞬間、
芝に両手をついた。
ミスター80ミニッツはいつも通りに仕事をして燃え尽きた。
体重はきょうも80分間で5キロ減ったという。
「悲しい。これからどうするはわからない。家族でクリスマスを楽しんで、そのあとに考える。」
記者会見とインタビューを録り終えてタクシーで熊谷駅へ。
電話では呼べずに待合所に来るタクシーを捕まえた。
なんともすっきりせず、飲みたいのかもわからずに売店でリザーブの水割り缶を買う。
東京で缶ビールと焼売、チキン弁当を買う。